こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。

「親が亡くなって、誰も住まなくなった実家を売りたい」
「でも名義は親のままで、兄弟ともまだ話していない」
そんなご相談をいただくことがあります。

先にお伝えします。相続した実家を売るまでは、「相続人と遺言の確認」「遺産分割の話し合い」「(まとまらないときの)家庭裁判所」「相続登記」「売り出し」の5つの順番で整理できます。

売る手続きそのものより前に、「誰が実家を受け継ぐか」と「名義」を整える段取りがあるためです。ここを先につかんでおけば、兄弟での話し合いも、期限への備えも、落ち着いて進められます。

この記事では、次の順にご紹介します。

  • 相続した実家を売るまでの5つの順番(図)
  • 最初に確かめること:相続人と遺言
  • 遺産分割の話し合いと、まとまらないときの家庭裁判所
  • 売る前の相続登記と、3年の期限
  • 名義が整ってから、売り出すまで

売れる値段や、売ったお金を分けるときの税金は、この記事では扱いません。

🧭 実家の相続売却は、5つの順番で整理できます

相続した実家を売るときは、「誰が受け継ぐか」と「名義」を整えることが、売り出しの前の大事な段取りです。この記事では、次の図の5つの順番で整理します。

相続した実家を売るまでの5つの順番の図。1 相続人と遺言を確かめる:相続人が数人いるときは分けるまで実家は相続人みんなの共有(民法第898条)、遺言で分けることが禁じられていないかも確かめる(第908条)。2 遺産分割の話し合い:遺言で禁じられた場合などを除き、相続人どうしはいつでも話し合いで分けられる(第907条第1項)、一切の事情を考えて分ける(第906条)。3 まとまらないときは家庭裁判所へ:遺産分割の調停を申し立てられ、まとまらなければ審判の手続きに移る。4 相続登記:売るには相続登記が要り、相続人申告登記だけでは足りず別に相続登記の申請が要る。期限は相続の開始と取得を知った日から3年以内(2024年4月より前の相続は令和9年3月31日まで)、遺産分割がまとまったらその日から3年以内にその内容の登記を。5 売り出しから引き渡しへ
相続した実家を売るまでの5つの順番(民法・不動産登記法、法務省・裁判所のページをもとに当社作成)

4番の相続登記が、売るための入口です。法務省は、相続人申告登記という簡単な登記をしていても、相続した不動産を売るときは、別に相続登記の申請が必要だとしています。そして、相続登記の中身は、2番(まとまらなければ3番)で決まった「誰が受け継ぐか」で変わります。

この記事では、話し合い → 名義 → 売り出しの順で整理しています。遺言で分け方が決まっている場合などは、通らない番号もあります。まずは、ご自分の家族がいま、図のどの番号にいるかを確かめてみてください。

出典:民法(e-Gov 法令検索) 第898条・第906条・第907条・第908条、不動産登記法(e-Gov 法令検索) 第76条の2、法務省「相続人申告登記について」、裁判所「遺産分割調停」

👪 最初に、実家が「誰のものか」と遺言を確かめます

相続人が何人かいるときは、遺産を分けるまで、実家は相続人みんなの共有です。実家は、相続人一人だけのものではありません。だからこそ、まず相続人を確かめます。

民法 第898条は、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」と定めています。各相続人は、相続分に応じて、亡くなった方の権利や義務を受け継ぎます(第899条)。

あわせて、遺言があるかも確かめましょう。民法 第908条では、亡くなった方は遺言で、相続が始まった時から5年を超えない期間を決めて、遺産を分けることを禁じることができます。相続人どうしで、5年以内の期間を決めて「分けない」という約束をすることもできます(期間の終わりは、相続が始まった時から10年まで)。

誰が相続人になるかは、家族の形によって変わります。迷ったら、話し合いの前に、司法書士や弁護士に相続人を確かめてもらうと安心です。

出典:民法(e-Gov 法令検索) 第898条・第899条・第908条

🤝 遺産分割の話し合いで、誰が実家を受け継ぐかを決めます

相続人どうしは、いつでも、話し合いで遺産を分けることができます。実家を誰が受け継ぐかも、この話し合いで決めます。

民法 第907条第1項は、遺言で禁じられた場合や、分けない約束をした場合を除き、相続人は「いつでも、その協議で」遺産の全部または一部を分けられると定めています。分け方については、第906条が、遺産の種類や性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活の状況など、一切の事情を考えて分けるとしています。

たとえば、「実家に思い入れのある人」「遠くに住んでいて管理が難しい人」「近くに住んでいる人」など、事情は人それぞれです。法律は「長男が受け継ぐ」「住んでいる人が受け継ぐ」とは決めていません。

話し合いがまとまったら、その内容は相続登記にも使います。どう書き残すかは、司法書士に相談しながら進めましょう。

出典:民法(e-Gov 法令検索) 第906条・第907条第1項

⚖️ 話がまとまらないときは、家庭裁判所の調停があります

兄弟で話がまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることができます。

民法 第907条第2項は、話し合いがまとまらないとき、または話し合いができないときは、各相続人が家庭裁判所に分割を求められると定めています。裁判所の案内では、調停は、相続人の一人または何人かが、ほかの相続人全員を相手方として申し立てます。

裁判所の案内に書かれていること

話し合いの進め方:当事者双方から事情を聴き、必要に応じて資料を出してもらったり、遺産の鑑定をしたりして、それぞれの希望を聴き、合意を目指して話し合いが進められます
まとまらないとき:調停が不成立になると、自動的に審判の手続きが始まり、裁判官が一切の事情を考えて審判をします(審判=裁判官が分け方を決める手続き)
申立先:相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で決めた家庭裁判所
費用:亡くなった方1人につき収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なります)

必要な書類は、相続人の立場によって違います。裁判所のページで確かめるか、申し立てる家庭裁判所にお尋ねください。調停にかかる期間は、この記事では扱っていません。

調停は、裁判所で、合意を目指して話し合いを進める手続きです。話し合いが止まってしまったら、弁護士に相談しながら、この道も考えてみてください。

出典:民法(e-Gov 法令検索) 第907条第2項、裁判所「遺産分割調停」

🏷️ 売る前に、相続登記で名義を書き換えます

相続した実家を売るには、相続登記で名義を書き換える必要があります。相続登記は、2024年4月から義務になっていて、期限もあります。

不動産登記法 第76条の2第1項により、相続で不動産を取得した人は、相続の開始を知り、かつ取得を知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。2024年4月より前の相続で、まだ登記をしていない場合は、令和9年(2027年)3月31日まで(取得を知った日が2024年4月以降なら、その日から3年以内)です。遺産分割がまとまったときは、まとまった日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請することも義務になっています。

相続登記相続人申告登記
どんな登記か名義を、受け継いだ人に書き換える期限内の相続登記が難しいときに、簡単に義務を果たせる仕組み
申し出の仕方など―特定の相続人が一人で申し出られる。登録免許税はかからない
実家を売るとき売るには、この登記が要る別途、相続登記の申請をする必要がある
法務省「相続登記の申請義務化について」「相続人申告登記について」をもとに当社作成。相続人申告登記では、遺産分割にもとづく相続登記の義務は果たせません

正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料(お金を納めさせる行政上の制裁)の対象になります。ただし、期限を過ぎた日に自動で科されるのではなく、登記官が、期間を決めて申請するよう催告する手続きがあります。登記の申請の代理や書類の作成を仕事として行えるのは、司法書士と弁護士です。期限や過料のくわしいことは相続登記の義務化|期限は3年・実家を売る前ににまとめています。

話し合いが長引きそうなときは、相続人申告登記で期限の義務を果たしておき、話し合いがまとまってから相続登記をする、という順番も考えられます。どちらがよいかは、司法書士にご相談ください。

出典:不動産登記法(e-Gov 法令検索) 第76条の2・第164条、法務省「相続登記の申請義務化について」、法務省「相続人申告登記について」

🏠 名義が整ったら、売り出しから引き渡しへ進みます

相続登記が済めば、ふつうの家を売るときと同じ流れで、売り出しから引き渡しへ進みます。

不動産会社への相談・査定、媒介契約、売り出し、売買契約、引き渡しの順番と、それぞれの書面や期限は、空き家売却の流れ|相談から引き渡しまで6つの順番にまとめています。相続した実家ならではの判断として、建物を残して売るか、解体して売るかも考えておきたいところです。判断の材料は古家付き土地売却|残すか更地にするか決め手5つに、家財が残ったままの場合は空き家はそのまま売れるか|家財・建物・名義にあります。

相続人が県外に住んでいて、実家に何度も通えないこともあります。鍵をお預かりして、遠方にお住まいでも売却まで進められます。売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。

話し合いや登記の途中でも、売り方の見通しを先に知っておくと、兄弟での話し合いの材料になります。

❓ よくあるご質問

Q. 遺産分割の話し合いに、期限はありますか

一言では言えません。民法 第907条は「いつでも」話し合いで分けられると定めています。一方で、相続が始まってから10年を過ぎてから分けるときは、相続分についての決まりの一部が当てはまらない、という条文もあります(民法 第904条の3。10年を過ぎる前に家庭裁判所に分割を求めたときなどは別です)。相続から長い時間がたっている場合は、早めに弁護士・司法書士にご相談ください。

出典:民法(e-Gov 法令検索) 第904条の3・第907条

Q. 兄弟の一人が遠くに住んでいても、手続きは進められますか

相続人申告登記は、特定の相続人が一人で申し出ることができます(ほかの相続人の分も含めた代理の申出もできます)。調停を申し立てる家庭裁判所は、相手方のうちの一人の住所地か、当事者が合意で決めた家庭裁判所です。

出典:法務省「相続人申告登記について」、裁判所「遺産分割調停」

Q. 実家を売ったあとの税金は、どうなりますか

売って利益が出たときは、税金がかかることがあります。相続した家なら、特例が使える場合もあります。計算の順番は空き家売却の税金|相続した実家の計算の順番、相続税を払った方は相続した土地を3年以内に売却|相続税の取得費加算、特例の要件は空き家特例3,000万円控除|要件と使えない例、申告は実家売却の確定申告|必要な書類と時期にまとめています。売ったお金を相続人で分けるときの税金は、税務署か税理士にご確認ください。

📝 この記事のまとめ

  • 相続した実家を売るまでは、「相続人と遺言の確認」「遺産分割の話し合い」「(まとまらないときの)家庭裁判所」「相続登記」「売り出し」の5つの順番です
  • 相続人が何人かいるときは、遺産を分けるまで、実家は相続人みんなの共有です。遺言で分けることが禁じられていないかも確かめます
  • 相続人どうしは、遺言で禁じられた場合などを除き、いつでも話し合いで分けられます。まとまらないときは、家庭裁判所の遺産分割の調停があります
  • 売るには相続登記が要ります。相続人申告登記だけでは売れません。期限は、相続の開始と取得を知った日から3年以内(2024年4月より前の相続は令和9年3月31日まで)です
  • 次の一歩は、①図のどの番号にいるかを確かめる、②相続人と遺言を確かめる、③名義を書き換える段取りを司法書士に相談する、の3つです

相続した実家を売る道のりは、家族の気持ちと、法律の手続きが重なります。登記の期限だけは早めに確かめておきましょう。順番さえつかめれば、ほかのことはご家族で一つずつ確かめながら進められます。

本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、民法・不動産登記法の条文(2026年10月時点・e-Gov 法令検索)、法務省・裁判所のページに基づく一般的な説明です。相続人や遺産分割、登記についての判断は、司法書士・弁護士・家庭裁判所にご確認ください。税金は、税務署・税理士にご確認ください。最終更新日:2026-10-16。

売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。

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