こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
「親が施設に入って、実家が空いてしまった」
「売るなら今なのか、それとも先なのか」
そんなご相談をいただくことがあります。
先にお伝えします。実家を売るタイミングを考えるとき、いちばん大切なのは、親に判断する力があるうちに、家族で「売るか・残すか」「誰に任せるか」を話しておくことです。
判断する力が十分でなくなると、親が自分で決めることが難しくなり、家庭裁判所の手続きが必要になることもあります。特例の細かな当てはめは、あとで税務署に確かめられます。ただ、施設にいる間の家の使い方と売る期限は、先に知っておきたいことです。
この記事では、次の順にご紹介します。
- 親が元気なうちに、家族で決めておきたいこと(図)
- 施設にいる間は、実家を貸さない・ほかの人を住まわせない
- 相続のあとに売るなら、期限と売り方を先に知っておく
- 実家売却のタイミングで変わる2つの特例と、施設に入っていた場合の3つの要件
親が生きているうちに売るか、相続のあとに売るか、どちらが得かはご家族ごとに違います。この記事は、家族で話し合うときや、税務署・税理士に相談する前の「下準備」としてお使いください。
🧠 親が元気なうちに、家族で決めておきたいこと
親に判断する力があるうちに、売るか・残すか、誰に任せるかを、親と一緒に家族で話しておきましょう。
民法は、契約のときに意思能力(判断する力)がなければ、その契約は無効と定めています。判断する力が十分でなくなると、成年後見の制度を使い、後見人などが親に代わって売る形になることがあります。その場合、住まいの家を売るには家庭裁判所の許可が要ります。

裁判所の説明では、許可が要る「住まいの家」には、今は施設に入っていて住んでいない家も含まれます。後見人などが許可を得ずに売ると、その売却は無効です。許可が要るものには、売ることのほか、建物の解体も入ります。
元気なうちにできる備えとして、任意後見という制度があります。親に十分な判断する力があるうちに、任せる人と任せることを決め、公正証書で契約しておく仕組みです。任意後見の契約は、判断する力が不十分になったあと、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだときから効力が生じます。任意後見でも家庭裁判所の手続きがあるため、細かな点は司法書士や家庭裁判所にご確認ください。なお、成年後見の制度は2026年(令和8年)に法律が改正され、施行の日は今後、政令で決まります。
たとえば、親が施設に入ったばかりで、まだ会話がしっかりできるうちに、ご兄弟が集まって「実家はいずれ売る」「手続きは長男に任せる」と親の考えを聞いておく、といった形です。図の4つを、一度に決めきらなくても構いません。
まずは次に親に会うときに、図の4つのうち1つでも話題にしてみてください。詳しくは実家じまいは親が元気なうちに|親子で話す順番と、認知症の親の実家売却|後見と家庭裁判所の許可をご覧ください。
出典:民法(e-Gov 法令検索) 第3条の2、裁判所「居住用不動産の処分についての許可」、法務省 成年後見制度Q&A、法務省「民法等の一部を改正する法律」について
🚫 施設にいる間は、実家を貸さない・ほかの人を住まわせない
施設に入っている間に実家を貸したり、ほかの人が住んだりすると、亡くなったあとに空き家特例を使えなくなります。空き家のままにしておくのがもったいなく感じても、ここは慎重に考えたいところです。
これは、親が亡くなったあと、相続した人が空き家特例で売る場合の話です。施設に入っていた親の家でも、要件を満たせば空き家特例の対象になります(国税庁 No.3307)。その要件の一つが、施設に入ってから亡くなるまで、家が「事業の用、貸付けの用または被相続人以外の者の居住の用」に使われていないことです。家賃を受け取って貸すことも、ご家族が移り住むことも、この文に当たります。
施設にいる間に確かめたいこと
家は、親の物を置いたままにしておく
施設に入ってから亡くなるまで、家が引き続き親の物の保管などに使われていることも要件です。家財の整理を急ぐ前に、この要件を思い出してください。
貸す・人に住んでもらう前に、税務署に相談する
貸すと、特例の要件から外れます。貸す収入と、特例が使えなくなる影響を並べて考えましょう。
入所の前に同居していた人がいたかを確かめる
施設に入る直前に、親のほかに住んでいた人がいれば、特例の対象から外れます。
「空いているから貸そうか」と考えるのは自然なことです。ただ、貸す前に一度、税務署へご相談ください。それが、あとの選択肢を守ります。
出典:国税庁 No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋(令和8年4月1日現在法令等)
📅 相続のあとに売るなら、期限と売り方を先に知っておく
相続のあとに空き家特例で売るなら、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件です。
ただし、制度そのものが2027年(令和9年)12月31日までの売却に限られています。たとえば2026年に相続した場合、3年の期限は2029年の年末ですが、今の法令では2027年12月31日までに売る必要があります。期限があるため、相続のあとで慌てないよう、売り方を先に知っておくと安心です。空き家特例では、次の3つの売り方が認められています。
| 売り方 | 主な要件(原文の要点) |
|---|---|
| 家を残したまま売る | 売る時に、家が一定の耐震基準を満たしていること |
| 解体してから土地を売る | 解体から売るまで、土地を貸したり、建物・構築物の敷地にしたりしていないこと(貸駐車場などは外れるおそれ) |
| 売ったあと、翌年2月15日までに耐震化か解体 | 2024年(令和6年)1月1日以後の売却に限る |
家を残して売るか、解体してから売るかで迷われたら、両方の見通しを並べて比べるのが近道です。当社は、解体の見積りと売却の査定を、同時にお出しできます。売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。
ほかにも、売却代金が1億円以下であること、相続税の取得費加算の特例とは重ねて使えないこと、などの要件があります。特例を使うには、市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」をそろえて、確定申告をする必要があります。申告の段取りは実家売却の確定申告|必要な書類と時期にまとめています。
相続のあとに売るなら、まず相続の日から期限の年末を書き出しておくことが、特例を逃さないための備えになります。
出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
📘 実家売却のタイミングで変わる2つの特例と、施設の3つの要件
親が生きているうちに親が売るならマイホーム特例、相続のあとに受け継いだ人が売るなら空き家特例が、それぞれの候補です。
どちらも、売って得た利益(譲渡所得)から最高3,000万円を差し引ける制度です(空き家特例は、家と土地を相続した人が3人以上なら最高2,000万円)。

マイホーム特例は「売る人自身が住んでいた家」の特例で、以前に住んでいた家は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限られます。ただ、施設に入った親の家に当てはまるか(いつから数えるか)は、国税庁 No.3302 のページには書かれていません。入所した日と売る予定の時期を持って、税務署でご確認ください。
空き家特例は、もともと「亡くなる直前に親が住んでいた家」が対象です。ただ、施設に入っていた場合も、次の3つの要件をすべて満たせば、施設に入る直前まで住んでいた家が対象の家として扱われます。売り方や期限などの要件は、これとは別に必要です。
施設に入っていた場合の3つの要件(国税庁 No.3307)
認定を受けていたかは、施設に入る(家に住まなくなる)直前の時点で判断されます。施設に入ったあとで認定を受けた場合の扱いや、施設の種類が「老人ホーム等」に当たるかは、税務署へ。
要件の全体は空き家特例3,000万円控除|要件と使えない例にまとめています。ご自分の場合は、施設に入った日・認定を受けた日・家の建築日の3つを、書類で確かめるところから始めてみてください。
出典:国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例、No.3306、No.3307
❓ よくあるご質問
Q. 施設に入った親の実家は、今すぐ売ったほうがいいですか
一概には言えません。親が売るか、相続のあとに売るかで使える特例が違い、どちらが有利かは、家の建築日や売る価格、ご家族の事情で変わります。まずは家族で話し、売る前に税務署か税理士にご相談ください。
Q. 親の家に、介護のために子どもが同居していました。空き家特例は使えますか
施設に入る直前に親のほかに住んでいた人がいれば、要件(3)から外れます。いつから同居していたかなど、細かな点は税務署へ。
Q. 実家がマンションです。空き家特例は使えますか
区分所有建物(マンションなど)の登記がされている建物は、空き家特例の対象になりません。
Q. 相続したあと、解体してから売ってもいいですか
はい。解体してから土地を売る道も、空き家特例で認められています。ただし、解体から売るまでの間に、土地を貸駐車場などに使うと要件から外れるおそれがあります。解体の届出や段取りは実家の解体の手続き|届出・石綿・滅失登記の順番をご覧ください。
📝 この記事のまとめ
- いちばん大切なのは、親に判断する力があるうちに、売るか・残すか、誰に任せるかを家族で話しておくことです
- 判断する力が十分でなくなると、後見人などが代わって売る形になることがあり、住まいの家(施設にいて今は住んでいない家も)を売るには家庭裁判所の許可が要ります
- 施設にいる間に実家を貸したり、ほかの人が住んだりすると、空き家特例の要件から外れます
- 相続のあとに空き家特例で売るなら、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ制度の期限の2027年12月31日までに。売り方は3つあります
- 次の一歩は、①次に親に会うとき4つのうち1つを話題にする、②施設に入った日・認定を受けた日・家の建築日を確かめる、③売る前に税務署か税理士へ、の3つです
親が施設に入ったあとの実家には、家族の暮らしの記憶がそのまま残っています。親が元気なうちの話し合いは、家族にとってかけがえのない時間にもなります。期限のある制度もあるため、まずは日付を確かめるところから、一つずつ進めていきましょう。ご家族にとって無理のない形を一緒に考えさせてください。
本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、国税庁タックスアンサー No.3302・No.3306・No.3307、民法の条文(2026年10月時点・e-Gov 法令検索)、裁判所・法務省の公式ページに基づく一般的な説明です。特例が使えるかどうか、どちらの時期に売るのが有利かは、税務署・税理士にご確認ください。成年後見や家庭裁判所の手続きは、家庭裁判所・司法書士・弁護士にご確認ください。最終更新日:2026-10-13。
売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。