こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
親御さんがまだ元気に暮らしているからこそ、「この家、将来どうする?」とは切り出しにくいものです。実家じまいのご相談は、こうしたところから始まることが多いと感じています。
結論から申し上げます。実家じまいの話は、親御さんがお元気なうちに、親御さんの気持ちを聞くところから始めるのがおすすめです。家やお金の話は、その後で構いません。
理由は二つあります。一つは、家の行き先を決めるのは、まず住んでいる親御さんご本人だからです。もう一つは、判断が難しくなってからでは、売ることも解体することも、手続きがぐっと重くなるからです。この記事では、話す順番と、あらかじめ知っておきたい制度の基本をお伝えします。
📊 九州は「将来空き家になるかもしれない」と答えた人が多い
全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が2026年9月23日に公表した『2026 住宅居住白書』では、「ご自身またはご家族(ご両親等)の家」が空き家になっている、または将来なる可能性があるかを尋ねています。
全国では「既に空き家になっている」が11.9%、「将来空き家になる可能性がある」が25.3%で、合わせて37.2%でした。地域別に見ると、九州は「既に」が9.4%、「将来」が29.6%で、「将来」と答えた人の割合が全国(25.3%)より高くなっています。

調査の概要:全国の20〜65歳の男女5,000名/インターネット調査/2026年7月30日〜8月5日(全国宅地建物取引業協会連合会『2026 住宅居住白書』)。エリア別の回答者数は誌面に記載がなく、九州全体の数字です(福岡県だけの数字ではありません)。
この調査の回答者は20〜65歳です。つまり、親の家のことを気にかけている子の世代が多く含まれています。既に空き家、または将来空き家になりうる家がある方(1,859人)に今の状況を複数回答で尋ねると、「話し合いの必要を感じつつもまだ行っていない」が35.0%で最も多く、「家族(親子)で話し合いを進めている」は18.1%でした。
🗣️ 親と子で、気持ちの速さは違います
親子の話し合いは、どちらかが急ぐと、もう一方が戸惑うものです。60代でご自宅の住み替えを考えていた方は、話し始めてすぐ、LINEでこんなご報告をくださいました。
「昨日、息子に話したら まだ相続の方が終わっていないし早すぎるんじゃないかと言われました」
(福岡県内にお住まいの60代の方/2026年4月のLINEで)
私自身も、この話の難しさを身をもって感じています。あるご家族との面談で、つい自分の母の話をしてしまいました。
「なんかモヤモヤ見立てがない状態っていうのが、私のその母に対する気持ちもそうですけど、どうすると怖いなみたいな。」
(不動産事業部・藤木/2026年6月のご相談で)
自分の母にも同じ説明を何度もしていますが、なかなか返事はもらえません。仕事で何度もこの話をしていても、自分の親とは簡単にはいきません。ですから、話がまとまらないことを、どうか責めないでください。大事なのは一度で決めることではなく、話を始めておくことです。
ご相談をいただくのも、親御さんご本人より、お子さんの立場の方からが多いのが実感です。
「今、相談いただくパターンで多いのは、うん、娘さんの立場の方から父と母の実家をっていうパターンが多いんです。」
(不動産事業部・藤木/2026年9月のご相談で)
🧭 話す順番のおすすめ
いきなり「家をどうする?」と聞くと、親御さんは身構えます。次の順番で進めると、話が入りやすくなります。
一つ目:これからの暮らしの希望を聞く
どこで、誰の近くで暮らしたいか。買い物や病院へ行くのに困っていないか。家の話より先に、親御さんご自身の暮らしの話から入ります。住み替えを考えている方には、先に借りる先の住まいを見つけてから売却を進めるという進め方をご紹介することがあります。
次の住まいが決まっていれば、急いで引っ越し先を探さなくて済み、売却もゆっくり進められます。住み替え先を先に探すという順番は、親御さんの安心にもつながります。
二つ目:家への思いを聞く
家に残したい物、思い出のある場所、家を手放すことへの気持ち。ここは急がずに聞いてください。つらさの中身を分けて考える方法は、実家を売るのがつらいときの記事でお伝えしています。
お子さんの側も、家族の家への思いを大切にしてください。私たちも、親御さんとだけ話を進めるときは、ほかのご家族にとっても大事な実家であることを忘れず、必要があればご家族にご挨拶をさせていただいています。
三つ目:お金のことを聞く
家を売ったお金を、何に使いたいか。施設に入る費用や、これからの暮らしに充てたいという方も少なくありません。お母様が施設に入られたご家族の娘さんは、こう話されました。
ある方
「もう結局お金はもう母に使ってもらったら、うん、それが一番いいと思います。」
(福岡県内に実家がある方/2026年6月のご相談で)
四つ目:手続きのことを確かめる
家の名義は誰か。権利証や固定資産税の納税通知書はどこにあるか。ここまで話せていれば、いざというときに慌てずに済みます。
⚖️ 判断が難しくなる前に、知っておきたいこと
ここからは少し制度の話です。大切なところなので、公的な資料の言葉をそのまま引きながらお伝えします。
契約の時に意思能力がないと、その契約は無効になります
民法には「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」とあります(第3条の2・e-Gov法令検索)。家を売る契約も同じです。
ただし、認知症と診断されたら、その時点で契約ができなくなる、という意味ではありません。判断されるのは、契約をするその時の能力です。とはいえ、判断が揺らぎ始めてからでは、契約の時に意思能力があったかどうかが、後から問われるおそれがあります。
判断能力がさらに不十分になれば、ご本人が自分で家を売る手続きを進めること自体が、難しくなっていきます。
後見人が代わりに住まいを売る・解体するには、家庭裁判所の許可が要ります
判断能力が十分でなくなった方のために、家庭裁判所が後見人などを選ぶ仕組み(法定後見)があります。成年後見制度には、この法定後見と、あとで触れる任意後見の二つがあります。裁判所の案内では、後見人などが本人に代わって本人の住まい(居住用不動産)を売ったり解体したりするには、家庭裁判所の許可が必要とされています。
さらに、この居住用不動産には「本人が現在は病院や施設に入所しているため居住していないが、将来居住する可能性がある場合、又は入所前に居住していた場合なども含みます」とあり、「処分には、売却、抵当権の設定、賃貸借契約の締結・解除、建物取り壊し等があります」と書かれています(出典:裁判所「居住用不動産の処分についての許可」)。後見人などが代わりに進める場合は、親御さんが施設に入って空き家になった家を解体するときも、許可の対象になるということです。
裁判所の案内には「家庭裁判所の許可を得ないで処分をした場合、その処分は無効となります」とも書かれています。
手続きには時間もかかります。裁判所の案内では、申立てから審判まで「おおむね1か月から2か月程度」かかり(鑑定を行う場合はさらにかかります)、また後見などが始まると、本人の能力が回復するか亡くなるまで続き、「ご家族の意思や本人の希望でやめることはできません」とされています(出典:裁判所「成年後見制度の概要」)。住まいを売ったり解体したりするには、後見が始まったあとで、あらためて許可の申立てが要ります(その期間は案内に書かれていません)。
なお、成年後見制度は法律の改正が決まっています。法務省によると、令和8年6月に成立した改正法で、後見と保佐の制度を廃止して「補助」の制度に一元化し、必要がなくなったときに利用を終えられる仕組みなどが設けられます。施行日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされ、まだ決まっていません(出典:法務省の案内)。この記事の説明は、2026年9月時点の現行の制度に基づいています。
元気なうちに選べる「任意後見」
法務省の案内では、任意後見制度は「本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ、任意後見人となる方や将来その方に委任する事務…の内容を定めておき」、判断能力が不十分になった後に任意後見人が本人に代わって行う制度です。契約は公証人が作成する公正証書で結ぶ必要があります(出典:法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」)。判断能力が十分なうちに結んでおく仕組みという点で、まさに「元気なうちに」考えておきたいものです。
具体的な手続きは、司法書士や弁護士、家庭裁判所にご相談ください。当社は売却と解体の見立てを担当し、必要に応じて専門家と一緒に進めています。
📅 相続が起きたら、期限のあるもの
親御さんが亡くなって相続が起きると、期限のある手続きが出てきます。たとえば相続登記は、法律で「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内」に申請することが義務付けられ、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法第76条の2・第164条。出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
相続した空き家を売ったときの税の特例にも、売る時期の期限があります(実家を売るのがつらいときの記事で説明しています)。
先送りにすると、次の世代がもっと分からなくなります。相続の手続きをしないまま代替わりが重なると、相続人が増え、話をまとめるのがどんどん難しくなるからです。
過去の経験からも、ご存命のうちに整理された方のほうが、あとの手続きが軽く済むと感じています。
「過去の経験的になんですけど、ご存命のうちに整理される方が、後から諸々がやっぱかかってこないんで、その方がいいんじゃないかなと。」
(不動産事業部・藤木/2026年6月のご相談で)
📋 お一人でもできること
親御さんと話す前に、お子さんの側で準備できることがあります。
- 家の登記の名義を確かめる(法務局で登記事項証明書を取れます)
- 固定資産税の納税通知書が、どなたに届いているかを確かめる
- 親御さんの暮らしで困っていること(買い物、病院、階段など)をメモしておく
- 兄弟姉妹がいる場合は、まず「話を始めたい」ことだけを共有しておく
- 売った場合・残した場合の見立てを知っておく(決めるためではなく、話の材料として)
最後の一つは、親御さんと話すときの材料になります。数字があると、「なんとなく不安」が「では、どうするか」に変わりやすいと感じています。
❓ よくあるご質問
Q. 親が家の話を嫌がります。どうすればよいですか
家の話からではなく、暮らしの話から始めてみてください。「最近、買い物は大変じゃない?」「病院に通うのに困っていない?」といった話の先に、自然と住まいの話が出てくることがあります。一度で決めようとせず、何度かに分けて話すつもりで構いません。
Q. 親に話す前に、子どもだけで相談してもよいですか
はい。お子さんの立場からのご相談は多くいただいています。親御さんに話す前の材料集めとして、見立てや制度の確認だけのご相談もお受けしています。ただし、家を売るかどうかを決めるのは、名義人である親御さんご本人です。いただいた見立ては、親御さんと話すときの材料としてお使いください。
📝 この記事のまとめ
- 全宅連の2026年の調査では、九州で「将来空き家になる可能性がある」と答えた人が29.6%で、全国(25.3%)より高くなっています
- 親子の話は、これからの暮らし → 家への思い → お金 → 手続きの順に進めると入りやすくなります
- 契約の時に意思能力がないと、家を売る契約は無効になります。後見人などが代わりに親御さんの住まいを売る・解体するには、家庭裁判所の許可が要ります(施設に入って空き家になった家も含みます)
- 判断能力が十分なうちに選べる任意後見という仕組みもあります。成年後見制度は改正が決まっていて、施行日はまだ決まっていません
- 話がまとまらなくても大丈夫です。大事なのは、元気なうちに話を始めておくことです
親御さんと話す前の材料集めからでも、ご相談いただけます。ご家族にお見せいただける見立てをご用意します。
本記事の調査の数字は、全国宅地建物取引業協会連合会『2026 住宅居住白書』(2026年9月23日公表)によります。成年後見制度・相続登記の説明は、裁判所・法務省の公式ページ(2026年9月24日確認)に基づく一般的な説明で、2026年9月時点の現行制度によります。個別の手続きは、司法書士・弁護士・家庭裁判所にご相談ください。お客様・当社の言葉は、ご本人の了承を得て、お名前や場所が分からない形で掲載しています(録音・記録の言葉のまま前後を省いて引用し、LINEの改行をつないだ箇所と絵文字を除いた箇所があります)。最終更新日:2026-09-25。
売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。