こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
相続した実家を売ったら、税金はいくらかかるのか。売るかどうかを考えるとき、まず気になるところだと思います。この記事では、国税庁の資料をもとに、税金が決まるまでの計算の順番を整理します。
結論から申し上げます。税金がかかるのは、売った代金そのものではなく、代金から取得費と譲渡費用を差し引いた利益(譲渡所得)です。給与などの所得とは分けて計算します(国税庁 No.3202)。
- 順番は、①売った代金 → ②取得費を引く → ③譲渡費用を引く → ④特別控除を引く → ⑤税率をかけるです
- 相続した実家の取得費は、親御さんが買ったときの代金などが基です。分からなければ、売った金額の5%にできます
- 税率は、売った年の1月1日に所有期間が5年を超えるかで変わります。所有期間は、原則として親御さんの取得の時期から数えます
- 空き家特例などの要件に当てはまれば、利益から大きな額を差し引ける場合があります
最後の判断は、税理士か所轄の税務署にお任せください。ここでは、相談の前に知っておくと話が早い順番を、国税庁の言葉で確かめます。
🧮 計算の式は1本です
国税庁は、土地や建物を売ったときの式を次のように示しています(国税庁 No.1440)。
収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
出典:国税庁 No.1440。課税譲渡所得金額=税金がかかる利益の額。この額に、所有期間に応じた税率をかけます
この式を、上から順に一つずつ埋めていきます。
👣 計算の順番:5つの段
相続した実家を売ったときの税金が決まるまで
収入金額:売った代金
売った代金が基です。売った年の固定資産税・都市計画税のうち、売った日から年末までの分に当たる額を買主から受け取った場合は、その額も収入金額に入ります(No.1440)。
取得費を引く
親御さんなどが買ったときの購入代金・建築代金・購入手数料などが基です。建物は、年数がたって値打ちが減った分(減価償却費に当たる額)を差し引きます(いくら減るかは税理士か税務署で確かめられます)。相続のときに払った登記費用や不動産取得税も含まれます(業務に使っていない場合)。
譲渡費用を引く
売るために直接かかった費用です。仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売るために建物を解体したときの費用(国税庁の言葉では「取壊し費用」)などが当たります。固定資産税や修繕費のような維持・管理の費用は入りません。
特別控除を引く
空き家特例などの要件に当てはまれば、ここで差し引きます。控除できるのは、②③を引いたあとの額が限度です。
税率をかける
売った年の1月1日に所有期間が5年を超えていれば長期、5年以下なら短期の税率をかけます。
出典:国税庁 No.1440・No.3202・No.3252・No.3255・No.3270、『令和7年分 譲渡所得の申告のしかた』p.21
🏠 ②取得費:相続した実家で迷いやすいところ
相続した土地建物の取得費は、相続のときの評価額ではなく、親御さんなどがその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します(国税庁 No.3270)。
親御さんが買ったのが何十年も前で、売買契約書が見つからないこともあります。国税庁は、先祖伝来の土地であるとか、買い入れた時期が古いなどで取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とすることができるとしています。たとえば3,000万円で売った場合は150万円です(国税庁 No.3258)。ただし、この5%を使う場合は、相続人が払った登記費用などを取得費に含めることはできません。
また、相続税を納めた方は、一定の期間内に売れば、相続税の一部を取得費に足せる特例(取得費加算)があります。使えるのは相続税がかかった方だけで、空き家特例とは同じ家・敷地で重ねて使えません(国税庁 No.3267)。期限の数え方と計算は、相続した土地を3年以内に売却|相続税の取得費加算にまとめています。
🏗️ ③譲渡費用:解体した場合
国税庁は、譲渡費用の例として「土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額」を挙げています(国税庁 No.3255)。条件は、売るために直接かかった費用であることです。
解体の時期や、買主が解体する場合の扱いなど、気をつけたい点は古家付き土地売却の税金|解体費用は差し引けるかで詳しくまとめています。
🎁 ④特別控除:空き家特例とマイホーム特例の違い
相続した実家で候補になるのは、主に空き家特例です。昭和56年5月31日以前に建てられ、亡くなる直前に親御さんのほかに住んでいた人がいなかった家などの要件に当てはまれば、令和9年12月31日までの売却について、譲渡所得から最高3,000万円(令和6年1月1日以後の売却で、家と敷地を取得した相続人が3人以上なら2,000万円)を差し引ける場合があります(国税庁 No.3306)。要件と売る期限は、空き家特例3,000万円控除|要件と使えない例にまとめています。
よく似た名前のマイホーム特例(居住用財産を売ったときの最高3,000万円の控除)は、売る人ご自身が住んでいる家、または以前に住んでいた家(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります)を売るときの特例です(国税庁 No.3302)。ご自身が住んでいない親御さんの家を相続して売る場合の特例ではありません。実家に一緒に住んでいた方など、どちらに当たるか迷う場合は、税務署で確かめてください。
なお、2つ以上の特別控除を受ける場合は、その年を通じて合計5,000万円が限度です(『令和7年分 譲渡所得の申告のしかた』p.21)。
📊 ⑤税率:長期と短期
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 長期(売った年の1月1日に所有期間が5年超) | 15% | 5% |
| 短期(同じく5年以下) | 30% | 9% |
相続した土地建物の所有期間は、原則として、親御さんなどが取得した時期をそのまま引き継いで数えます(No.3270)。相続した日から5年を数えるわけではありません。親御さんの取得から売った年の1月1日までが5年を超えていれば、相続して間もなく売っても長期の扱いです。ただし「原則として」なので、親御さんが取得した時期は確かめておいてください。
✏️ 架空の数字で当てはめてみる
国税庁の例は、30年前に買った土地建物を1億4,500万円で売り、取得費(建物は減価償却費に当たる額を引いた後)が1億円、譲渡費用が500万円の場合です。課税長期譲渡所得金額は4,000万円で、所得税は600万円(15%)、復興特別所得税は12万6,000円(2.1%)、住民税は200万円(5%)になります(国税庁 No.3208)。
実家の売却に近い形で、架空の数字でも当てはめてみます(当方の計算です)。相続した実家(土地と家)を2,000万円で売り、親御さんが買ったときの書類が見つからず、売った金額の5%を取得費にした場合で、仲介手数料などの譲渡費用が100万円、長期だったとします。
| 段 | 計算 |
|---|---|
| ①収入金額 | 2,000万円 |
| ②取得費 | 売った金額の5% = 100万円 |
| ③譲渡費用 | 100万円 |
| ④特別控除 | なし(使わない場合) |
| 課税長期譲渡所得金額 | 2,000万円 −(100万円 + 100万円)= 1,800万円 |
| ⑤税額 | 所得税 270万円(15%)/復興特別所得税 5万6,700円(270万円×2.1%)/住民税 90万円(5%) |
もし空き家特例の要件に当てはまり、控除を受けられた場合は、控除はこの1,800万円が限度なので、課税譲渡所得金額は0円の計算になります。特例を受けるには、書類を添えて確定申告をすることが必要です(No.3306)。このように、②の取得費が分かるかどうか、④の特例が使えるかどうかで、結果は大きく変わります。
👣 お一人でもできること
売る前に、手元に集めておくとよい書類
見つからない書類があっても、そろった分だけで相談できます。申告は、売った年の翌年の2月16日から3月15日の間に行います(国税庁 No.3102。年によって、曜日の関係で終わりの日がずれます)。
❓ よくあるご質問
Q. 売って損が出たら、給料の所得と差し引きできますか
土地や建物を売って出た損は、一定の居住用財産の場合を除いて、土地建物の売却以外の所得と差し引きすることはできません(『令和7年分 譲渡所得の申告のしかた』p.20)。
Q. 買主から受け取った固定資産税の精算金は、税金の立替えですか
国税庁は、売った日から年末までの分に当たる固定資産税・都市計画税の額を受け取った場合、その額は譲渡価額に入るとしています(No.1440)。
Q. 特例を使えば、税金はかからなくなりますか
そうとは言えません。特例には要件と限度額があります。また、特例を受けるには確定申告が必要です。
📝 この記事のまとめ
- 相続した実家を売ったときの税金は、代金から取得費・譲渡費用・特別控除を引いた額に、税率をかけて決まります
- 取得費は親御さんが買ったときの代金などが基で、分からなければ売った金額の5%にできます
- 売るために建物を解体した費用は、譲渡費用に入ります(条件は「売るために直接」)
- 相続した実家で候補になるのは主に空き家特例です。マイホーム特例は、売る人自身が住んでいた家の特例です
- 所有期間は原則として親御さんの取得の時期から数え、売った年の1月1日に5年を超えれば長期です
長く家族を見守ってきた実家を、次のオーナー様へ引き継ぐとき、手元にいくら残るかは大切な判断の材料です。まずは、親御さんが買ったときの書類を探すところから始めてみてください。書類が見つかるかどうかで、計算の②が変わります。解体するか、残して売るかに迷ったときは、いまの状況を伺うところから、一緒に考えます。
本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)と『令和7年分 譲渡所得の申告のしかた』に基づく一般的な説明です。税額の計算や特例が使えるかの判断は、税理士か所轄の税務署にご確認ください。当社は税の判断をいたしません。最終更新日:2026-10-07。
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