こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。

親御さんの相続を前に、「相続放棄すれば、使い道のない土地を持たずに済むのでは」と考えていませんか。

先にお伝えします。相続放棄で「いらない土地だけ」を手放すことはできません。放棄は、土地も家も預金も含めて、権利や義務を一切受け継がない手続きだからです。

しかも、期限は3か月と短く、一度したら撤回できません。放棄の前に家の解体や片付けを急ぐと、思わぬことになるおそれもあります。この記事では、次の順にご紹介します。

  • 相続放棄で、いらない土地は手放せるか(図)
  • 期限と手続き(家庭裁判所・3か月)
  • 放棄の前に、解体や片付けを急がない理由
  • 放棄のあとにも残ること(家の管理・次の相続人)
  • 土地だけ手放したいときの、ほかの道

放棄するかどうかは、ご家族の事情で答えが変わります。決める前に、全体の見取り図として読んでみてください。

🧭 相続放棄では「いらない土地だけ」は手放せません

相続放棄では、いらない土地だけを選んで手放すことはできません。放棄すると、土地だけでなく、家・預金なども含めて、何も受け継がないことになります。

相続放棄で手放す前に確かめる5つの図。1 放棄は全部か何もなしか。2 期限は相続の開始を知った時から3か月・家庭裁判所へ申述。3 一度したら撤回できない。4 解体・片付けはその前に専門家へ相談。5 放棄のあとも、家の保存の義務や次の順位の相続人など残ることがある
相続放棄で手放す前に確かめる5つ(民法・裁判所「相続の放棄の申述」・国土交通省と総務省の事務連絡をもとに当社作成)

裁判所は、相続放棄を「相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない」手続きと説明しています。民法でも、放棄した人は「初めから相続人とならなかったものとみなす」とされています。「一切」なので、欲しいものは残して、いらない土地だけを手放す、という使い方はできない、と読めます。

たとえば、親御さんの財産が「住んでいた家」「遠くの山林」「預金」だったとします。山林だけを放棄して、家と預金を受け継ぐことはできません。放棄するなら、3つとも受け継がないことになります。

ですから、放棄は「いらない土地をどうするか」ではなく、「相続そのものを受けるかどうか」の判断です。財産の全体を見てから決めましょう。

出典:裁判所「相続の放棄の申述」、民法 第939条(2026年10月時点の条文)

⏳ 期限は「知った時から3か月以内」、家庭裁判所へ

相続放棄は、相続の開始を知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述(書面で申し出ること)して行います。家族に「放棄する」と伝えるだけでは、放棄になりません。

民法は、相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に、承認か放棄をしなければならない、と定めています。起点は「知った時」で、亡くなった日と同じとは限りません。期間内に放棄も限定承認(受け継いだ財産の範囲でだけ借入れなどを返す承認)もしなければ、相続を認めた(単純承認をした)ものとみなされます。

相続放棄の手続きの要点

申述する先

亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。

費用

収入印紙800円分(申述する人1人につき)と、連絡用の郵便切手です。郵便料は裁判所ごとに異なります。

必要な書類

申述する人の立場(配偶者・子・親・兄弟姉妹など)で違います。裁判所のページでご確認ください。

3か月で決められないとき

財産を調べても判断する材料がそろわないときは、家庭裁判所に期間を伸ばす申立てができます。

期限があるので、まず財産の全体(土地・家・預金・借入れなど)を書き出すところから始めましょう。民法でも、承認や放棄の前に財産を調べることができる、とされています。

出典:裁判所「相続の放棄の申述」、民法 第915条・第921条・第938条

⚠️ 放棄を考えているなら、解体や片付けの前に相談を

放棄を考えているなら、家の解体や家財の片付けは、手を付ける前に専門家(弁護士・司法書士・家庭裁判所)に相談してください。相続財産を「処分」すると、相続を認めたものとみなされるからです。

民法は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなす、と定めています。ただし、保存行為(財産の今の状態を保つための行為)などは除かれています。

ところが、家の解体や片付け・形見分けが「処分」に当たるのか、「保存行為」に当たるのかは、条文には書かれていません。解体の仕事をしている私たちから見ても、ここは自分で判断せず、専門家に確かめてから動いていただきたいところです。

また、承認や放棄は、3か月の期間内でも撤回できません。取消しには別の決まりがありますが、「あとでやり直せばいい」と考えないほうが安全です。

放棄を考えているときに、先に確かめること

財産の全体を書き出しましたか(土地・家・預金・借入れなど)
相続の開始を知った日から、3か月以内ですか
家の解体・片付け・形見分けを始める前に、専門家に相談しましたか

個別の判断は、弁護士・司法書士・家庭裁判所にご確認ください。

出典:民法 第919条・第921条

🏠 放棄しても、家の管理などが残ることがあります

相続放棄をしても、すべての負担から離れられるとは限りません。家を現に占有している場合の保存の義務や、次の相続人のことが残るからです。

民法では、放棄した人が、放棄の時に相続財産を「現に占有しているとき」は、相続人や清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存しなければならない、とされています。

国土交通省と総務省の事務連絡(令和5年3月31日)は、放棄の時に家を現に占有している人は、空家法の「管理者」に当たると考えられる、としています。家に自分の家財や荷物を置いている場合や、家の鍵を持っている場合は、占有者に当たる可能性があるとも書かれています。ただし、当たるかどうかは、個別の事情ごとに判断が必要とされています。

もう一つは、次の相続人です。放棄した人は、初めから相続人でなかったことになります。そのため、亡くなった方の子が全員放棄すると、亡くなった方の親など(直系尊属)や兄弟姉妹が、この順で相続人になることがあります。配偶者は常に相続人です。誰が相続人になるかは、司法書士などにご確認ください。

また、全員が放棄すれば土地が自動的に国のものになる、とは言えません。民法は、「相続人のあることが明らかでないとき」は、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求で、相続財産の清算人(財産を整理する人)を選ぶ、と定めています。清算人は自動で選ばれるわけではありません。

放棄を考えるときは、家の鍵や家財をどうしているか、次に誰が相続人になるかも、あわせて専門家に伝えて相談しましょう。

出典:民法 第889条・第939条・第940条・第951条・第952条、国土交通省・総務省 事務連絡「相続放棄者の空き家の管理責任の考え方について」(PDF)

🔀 土地だけ手放したいときの、ほかの道

いらないのが土地だけなら、相続放棄ではなく、受け継いだうえで手放す道を考えます。家や預金は受け継ぎたい、という方に向いています。

法務省の相続土地国庫帰属制度のQ&Aには、国庫帰属以外の方法として、相続放棄のほか、地方公共団体等への寄附、民間での売買・贈与などが挙げられています。

受け継いだうえで手放す主な道

売る・ゆずる

建物があるまま売る、更地にして売る、買い取ってもらう、などの形があります。売る前には相続登記も必要です。相続登記の義務化|期限は3年・実家を売る前にもあわせてご覧ください。

国に引き取ってもらう

相続土地国庫帰属制度です。相続などで土地を受け継いだ人が申請できます。ただし、建物がある土地は申請できず、法務局の審査や費用もあります。

売れるかどうかの見通しがつくと、放棄するか、受け継いで手放すかを比べやすくなります。実家が売れないときにできること|見直す4つも参考になります。売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。

放棄の期限の3か月の中で、「受け継いで売った場合」の見通しも並べてみると、ご家族で決めやすくなります。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」

❓ よくあるご質問

Q. 兄弟のうち、自分だけ相続放棄できますか

はい。相続放棄は、相続人が一人ひとり家庭裁判所に申述する手続きで、収入印紙も申述する人1人ごとに必要です。ただ、自分が放棄すると、ほかの相続人の受け継ぐ分や、次に誰が相続人になるかに関わります。ご家族と話してから進めると安心です。

Q. 3か月を過ぎてしまったら、どうなりますか

条文にあるのは、期間内に家庭裁判所で期間を伸ばす手続きです。過ぎたあとの扱いは、この記事ではお答えできません。気づいた時点で、弁護士・司法書士・家庭裁判所にご確認ください。

Q. 放棄する前に、家の中の物を少しだけ持ち帰ってもよいですか

形見分けや片付けが「処分」に当たるかどうかは、条文には書かれていません。持ち帰る前に、弁護士・司法書士・家庭裁判所に確かめてください。

📝 この記事のまとめ

  • 相続放棄は、権利や義務を一切受け継がない手続きです。いらない土地だけを選んで放棄することはできません
  • 期限は、相続の開始を知った時から3か月以内。家庭裁判所に申述し、一度したら撤回できません
  • 放棄を考えているなら、家の解体・片付け・形見分けの前に、弁護士・司法書士・家庭裁判所へ相談しましょう
  • 放棄しても、家を現に占有していれば保存の義務があり、次の順位の人が相続人になることもあります
  • いらないのが土地だけなら、受け継いだうえで売る・国庫帰属などの道と比べてから決めましょう

相続放棄は、家族の財産を受け継ぐかどうかを決める、大きな判断です。期限があるからこそ、慌てて家に手を付ける前に、財産の全体と、受け継いだ場合の見通しを並べてみてください。分からないことがあって当然です。放棄そのものの判断は専門家へ。受け継いで売る場合の見通しについては、お気軽にご相談ください。

本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、民法(2026年10月時点の条文)、裁判所「相続の放棄の申述」、国土交通省・総務省の事務連絡(令和5年3月31日)、法務省の相続土地国庫帰属制度のQ&Aに基づく一般的な説明です。相続放棄をするかどうか、相続財産の処分に当たるかどうかなど、法律の判断は弁護士・司法書士・家庭裁判所にご確認ください。最終更新日:2026-10-15。

売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。

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