こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
親御さんが亡くなり、古い実家が残った。借入れのこともあって相続放棄を考えているけれど、「傷んだ家は放棄の前に解体したほうがいいのか」「解体費は誰が払うのか」と迷っていませんか。
先にお伝えします。相続放棄を考えているなら、実家の解体や片付けは、手を付ける前に弁護士・司法書士・家庭裁判所に相談してください。相続財産を「処分」すると相続を認めたとみなされますが、家の解体がそれに当たるかどうかは、条文に書かれていないからです。
解体の仕事をしている私たちから見ても、ここは急がないでいただきたいところです。この記事では、次の4つを順にご紹介します。
- 放棄を考えているとき、解体はいつ考えるか(図)
- 解体費用は誰が払うのか
- 放棄したあとも残ることがある「家の管理」
- 放棄したあと、実家は誰が引き継ぐのか
受け継ぐか放棄するかは、ご家族の事情で答えが変わります。決める前の見取り図として読んでみてください。
🧭 相続放棄を考えているなら、解体は「受け継ぐと決めてから」
相続放棄を考えているなら、実家の解体を考えるのは、受け継ぐと決めてからにしましょう。相続財産に手を付けると、放棄との関係で問題になるおそれがあるからです。

民法は、相続人が相続財産の全部または一部を「処分」したときは、単純承認(相続を認めて、権利も義務もすべて受け継ぐこと)をしたものとみなす、と定めています。ただし、保存行為(財産の今の状態を保つための行為)などは除かれています。
ところが、家の解体が「処分」に当たるのか、「保存行為」に当たるのかは、条文には書かれていません。ですから、「解体すると放棄できなくなる」とも、「解体しても放棄できる」とも、この記事では言い切れません。家財の片付けや形見分けも同じです。
たとえば、屋根が傷んで近所が心配、という場面でも、自分の判断で解体を始めず、まず専門家に家の状態を伝えて、何をしてよいかを確かめてください。
あわせて、放棄には期限があります。自分のために相続が始まったことを知った時(自分が相続人になったと知った時)から3か月以内に、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に申述(書面で申し出ること)します。期間内に放棄も限定承認もしなければ、単純承認をしたものとみなされます。そして、放棄は一度したら、期間内でも撤回できません。手続きの詳しい流れは、いらない土地は相続放棄で手放せる?期限と注意5つにまとめています。
まず財産の全体を書き出し、受け継ぐか放棄するかを決める。解体を考えるのは、受け継ぐと決めたとき。放棄すると決めた場合も、家に手を付ける前に専門家に確かめましょう。この順番を守ることが、ご家族を守ることにつながります。
出典:民法 第915条・第919条・第920条・第921条・第938条(2026年10月時点の条文)、裁判所「相続の放棄の申述」
💴 解体費用は誰が払う?条文にあるのは「保存」の義務
相続放棄した人が実家の解体費用を払う義務があるかどうかは、民法の条文には書かれていません。放棄した人について条文に書かれているのは、解体ではなく、家を「保存」する義務だからです。
民法では、放棄した人は「初めから相続人とならなかったものとみなす」とされています。そのうえで、放棄の時に相続財産を「現に占有しているとき」は、相続人や相続財産の清算人(財産を整理する人)に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存しなければならない、と定めています。
つまり、条文から読めるのは「今の状態を保って、次の人に引き渡すまで守る」ことまでです。解体費を払う義務がある、とも、ない、とも、この条文からは言えません。
一方で、受け継いだ方が解体する場合は、話が変わります。家を相続人の共有で持つなら、解体は原則として共有している全員の同意が要ります。費用の分け方や、名義が親のままで解体を進める方法は、実家の解体費用は誰が払う?払えないときの3つの道をご覧ください。
解体費のことで迷ったら、「自分は放棄するのか、受け継ぐのか」を先に決めると、考える道筋がはっきりします。
出典:民法 第939条・第940条
🏠 放棄しても、家の管理が残ることがあります
相続放棄をしても、実家の管理から完全に離れられるとは限りません。放棄の時に家を現に占有していれば、引き渡すまで保存の義務があるからです。なお、遠くに住んでいる方が「現に占有」に当たるかどうかは、条文からは決まりません。
国土交通省と総務省の事務連絡(令和5年3月31日)は、放棄の時に家を現に占有している人は、空家法の「管理者」に当たると考えられる、としています。
事務連絡で、占有者に当たる可能性があるとされている例
当たるかどうかは、個別の事情ごとに判断が必要とされています。
ただし、「鍵を持っていれば責任が残る」と言い切ってはいません。反対に、「鍵を返せば責任がなくなる」とも書かれていません。事務連絡は、国が自治体の担当者に向けて考え方を伝えたもので、裁判所の判断ではありません。
放棄を相談するときは、家の鍵や家財をどうしているかも、専門家に伝えましょう。そのうえで、家をどう守り、誰に引き渡すかを確かめておくと安心です。
出典:民法 第940条、国土交通省・総務省 事務連絡「相続放棄者の空き家の管理責任の考え方について」(PDF)
🔑 放棄したあと、実家は誰が引き継ぐのか
放棄した実家は、ほかの相続人や、次の順位の相続人に引き継がれることがあります。全員が放棄しても、自動的に国のものになるとは限りません。
放棄した人は、初めから相続人でなかったことになります。そのため、亡くなった方の子が全員放棄すると、亡くなった方の親など(直系尊属)、次に兄弟姉妹が、この順で相続人になることがあります。配偶者は常に相続人です。誰が相続人になるかは、司法書士などにご確認ください。
放棄したあと、家の保存や整理で出てくる仕組み
相続財産の清算人
「相続人のあることが明らかでないとき」は、家庭裁判所が、利害関係人または検察官の請求によって、財産を整理する清算人を選びます。自動で選ばれるわけではありません。
相続財産の管理人
家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって、相続財産の管理人を選ぶなど、財産の保存に必要なことを命じることができます。相続人がいるときにも使われることがある仕組みです(ただし書きで除かれる場合があります)。清算人とは別の人です。
市町村の略式代執行
空き家に必要な措置を命じる相手が、過失なく分からないとき、市町村長がその人の負担で措置を行う仕組みです。事務連絡は、占有者がいない場合に、これや清算人の制度を使って空き家の「処分等」を行うことが想定される、としています。
どの仕組みも、家庭裁判所や市町村が手続きを踏んで動くもので、放棄した日にすぐ家の行き先が決まるわけではありません。このように、放棄したあとの家の行方は、相続人の顔ぶれや家の状態で変わります。「放棄すれば、あとは誰かが片付けてくれる」と考えず、次に相続人になる方にも事情を伝えておくと、ご家族の間で行き違いが起きにくくなります。
受け継ぐと決めた場合は、相続人として、解体して更地にするか、建物を残して売るかを考えることになります。手放し方の比べ方はいらない土地を手放す方法|3つの道と考える順番も参考になります。解体工事のご相談やお見積りについては、解体工事のページもあわせてご覧ください。
出典:民法 第887条・第889条・第890条・第897条の2・第939条・第951条・第952条、国土交通省・総務省 事務連絡(PDF)、国土交通省 空家法のガイドライン(PDF)
今日からできること
解体や片付けは、受け継ぐか放棄するかを決めてから考えましょう。
❓ よくあるご質問
Q. 放棄を考えている実家が傷んで危ないときは、どうすればよいですか
民法では、保存行為をしても、単純承認をしたものとはみなされません。ただ、どこまでが保存行為に当たるかは、条文に例がありません。危ない箇所があるときこそ、専門家に家の状態を伝えて、何をしてよいかを確かめてください。
Q. 放棄したあと、家の鍵を返せば管理しなくてよいですか
一概には言えません。事務連絡は、鍵を持っていると占有者に当たる「可能性がある」としていますが、鍵を返せば責任がなくなる、とは書いていません。誰に、どう引き渡すかを含めて、専門家にご確認ください。
Q. 放棄したあとで、やはり実家を受け継ぎたくなったら
相続の放棄は、3か月の期間内でも撤回できません。取消しは別の規定によりますので、専門家にご確認ください。放棄の前に、受け継いだ場合の見通しも並べてから決めましょう。
📝 この記事のまとめ
- 相続放棄を考えているなら、実家の解体を考えるのは受け継ぐと決めてから。解体や片付けは、自分で判断せず専門家へ相談しましょう
- 家の解体が相続財産の「処分」に当たるか「保存行為」に当たるかは、条文に書かれていません
- 放棄した人の条文にあるのは「保存」の義務で、解体費を払う義務がある・ないは、条文からは言えません
- 放棄の時に家を現に占有していれば、引き渡すまで保存の義務があり、鍵や家財の扱いも確かめておきましょう
- 放棄した実家は次の順位の相続人に移ることがあり、全員が放棄しても自動的に国のものになるとは限りません
役割を終えようとしている実家をどう送り出すかは、ご家族にとって大きな決断です。放棄を考えているときは、家に手を付ける前に、まず受け継ぐか放棄するかを決めることから始めてください。分からないことがあって当然です。放棄そのものの判断は専門家へ。受け継いだあとの解体のことで迷われたら、お気軽にご相談ください。
本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、民法(2026年10月時点の条文)、裁判所「相続の放棄の申述」、国土交通省・総務省の事務連絡(令和5年3月31日)、国土交通省の空家法のガイドラインに基づく一般的な説明です。相続放棄をするかどうか、解体が相続財産の処分に当たるかどうか、放棄後の管理の責任など、法律の判断は弁護士・司法書士・家庭裁判所にご確認ください。最終更新日:2026-10-16。
解体工事のご相談やお見積りについては、解体工事のページもあわせてご覧ください。