こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
実家を売ったあとで、「本当にこれでよかったのか」と考えてしまう。実家は、思い出と一緒に手放すものですから、そう感じる方がいても不思議ではありません。気持ちのつらさについては、実家を売るのがつらいときでお伝えしました。
この記事で扱うのは、もう一つの後悔です。「あのとき知っていれば、別の選び方ができた」という後悔は、売る前に確かめておくことで、減らせるものがあります。
結論から申し上げます。実家を売る前に確かめたいのは、次の5つです。
- 手元に残るお金を、売る・残す・解体してから売る、で比べたか
- 税の特例と相続登記の期限を、日付で数えたか
- 家の名義と、親御さんの判断能力の状況を確かめたか
- 家族の気持ちを、売る前にそろえたか
- 契約の中身の説明を、署名の前に受けたか
順番は、後悔の多い順ではありません。売る前なら確かめられることを、確かめやすい順に並べています。一つずつ見ていきます。
📋 売る前に確かめる5つ
| 確かめること | 確かめないと起きうること | 売る前にできること |
|---|---|---|
| 手元に残るお金 | 手数料や解体の費用、税の扱いを知らずに決めてしまう | 売る・残す・解体してから売る、を手取りで比べる |
| 期限 | 税の特例の期限を過ぎてから、特例を知る | 相続が始まった日から、期限を日付で数える |
| 名義と判断能力 | 親御さん名義のままで、売る手続きが進められない | 登記の名義と、親御さんのお気持ちを確かめる |
| 家族の気持ち | 売ったあとも、家族の間にわだかまりが残る | 相続人全員で、売るかどうかを話す |
| 署名の前の説明 | 契約の中身を知らないまま署名する | 契約書の案を前もって受け取り、質問する |
① 手元に残るお金を、売る前に比べる
実家を売ったお金は、そのまま全部が手元に残るとは限りません。
不動産会社の仲介で売れば、仲介手数料を払います。受け取れる額の上限は、国土交通大臣の告示で決まっています。一方、業者が自ら買主になる買取は、仲介(媒介)ではないため、この手数料は通常かかりません。ただし、売主と買取業者の間に別の仲介会社が入れば、その会社への手数料がかかることがあります。手数料と手取りの比べ方は、古家付き土地の買取|仲介手数料と手取りで比べるで詳しく書いています。
相続した空き家を売るときは、税の特例を使えるかどうかでも、手元に残るお金が変わることがあります。国税庁の案内(No.3306)によると、一定の要件を満たせば、売ったことによる所得の金額(譲渡所得の金額)から最高3,000万円まで控除できます(相続人の数が3人以上の場合は2,000万円まで)。売った代金そのものから差し引くのではなく、「譲渡所得の金額」から差し引くものです。
建物を解体してから売るなら、その費用もかかります。売らずに残すなら、固定資産税などを払い続けることになります。売値の高さだけでなく、「最後にいくら残るか」で比べることが、あとで「こんなはずでは」とならないための第一歩です。空き家を残したときの税金は、空き家の固定資産税の記事でまとめています。
② 期限を、日付で数えておく
売る時期によって、使える制度が変わることがあります。気持ちの整理は急がなくてよいのですが、期限だけは先に確かめておきたいところです。
相続した空き家の特例には、期限が2つあります
国税庁の案内では、特例を使うには、平成28年4月1日から令和9年12月31日までに売ること、そして相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件です。2つのうち、早いほうが先に来ます。下の表の「相続が始まった年」は、亡くなられた年のことです。
| 相続が始まった年 | 3年のほうの期限 | 全体の期限 | 先に来るほう |
|---|---|---|---|
| 令和5年(2023年) | 令和8年12月31日 | 令和9年12月31日 | 令和8年12月31日(2026年12月31日) |
| 令和6年(2024年) | 令和9年12月31日 | 令和9年12月31日 | 令和9年12月31日 |
| 令和7年(2025年) | 令和10年12月31日 | 令和9年12月31日 | 令和9年12月31日 |
令和4年以前に相続が始まった場合は、3年のほうの期限がすでに過ぎています(令和4年なら令和7年12月31日)。
ほかにも、家が昭和56年5月31日以前に建てられたものであることや、売った家のある市区町村の長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」を添えること、家の「全部の取壊し等」をしてから売るか、令和6年1月1日以後の譲渡なら売った年の翌年2月15日までに「全部の取壊し等」が行われることなど、要件がいくつもあります。使えるかどうかの判断は、税理士か所轄の税務署にご相談ください。
売るには、相続登記が必要です
法務省の案内によると、相続で不動産を取得した相続人は、相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請することが義務になっています。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(3年を過ぎたら直ちに科されるのではなく、まず登記官からの催告があります)。令和6年4月1日より前に始まった相続で、まだ相続登記をしていない場合は、令和9年3月31日まで(相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降なら、その日から3年以内)です。
期限の内に義務を果たす方法として「相続人申告登記」もありますが、法務省は、相続した不動産を売るときは、別途、相続登記の申請が必要としています。相続登記の手続きの代理や書類の作成を頼めるのは、司法書士と弁護士です。売ると決めてから慌てないよう、名義が今どうなっているかを先に確かめておきます。
③ 家の名義と、親御さんの判断能力を確かめる
親御さんがご存命で、家が親御さんの名義なら、売主は、名義人である親御さんです。
民法では、意思表示をした時に意思能力がなかった法律行為は、無効とされています(民法第3条の2)。どういう状態なら意思能力がないとされるかは、条文には書かれていません。だからこそ、親御さんがご自分で考え、話せるうちに、家をどうしたいかを聞いておくことが大切です。
判断能力が十分でなくなったあとは、成年後見制度を使うことがあります。裁判所の案内では、成年後見人が本人に代わって本人の住まいを売ったり取り壊したりするには、家庭裁判所の許可が必要で、許可なく行えば無効になるとされています。施設に入っていて今は住んでいない家も、この「住まい」に入ります。
また、申立てから審判までは、おおむね1か月から2か月程度かかるとされています(鑑定を行う場合は、さらに期間が必要です。裁判所「成年後見制度の概要」)。なお、令和8年の法改正で、成年後見制度のうち「後見」と「保佐」は廃止され、「補助」の制度に一元化される予定です(施行日は未定。法務省)。ここで書いたのは、現行の制度の話です。
親御さんとの話し合いの順番は、実家じまいは親が元気なうちにの記事もご覧ください。手続きの判断は、司法書士・弁護士や家庭裁判所にご相談ください。
④ 家族の気持ちを、売る前にそろえる
実家の売却は、手続きとしては進められても、家族の気持ちがそろわないまま進むと、売ったあとにわだかまりが残ることがあります。相続人が何人かいるなら、売るかどうか、いつ売るか、売ったお金をどう分けるかを、売る前に全員で話しておきます。
話し合いでは、「早く決めたい人」と「まだ迷っている人」がいて当然です。どちらが正しいということはありません。急いで決めなくてよいことと、期限があって先に確かめたいことを分けておくと、話がかみ合いやすくなります。その分け方は、実家を売るのがつらいときで表にしています。
相続人の一人だけで進めないことについては、実家じまいでやってはいけないことでも取り上げています。
⑤ 署名の前に、説明を求める
全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)の『2026 住宅居住白書』(2026年9月23日公表)で、住まい探しや不動産取引で、不動産会社にどのようなサポートがあると安心できるかを複数回答で尋ねています。最も多かったのは「物件の良い点だけでなく、注意点も正直に教えてくれること」の48.4%、次いで「契約前に十分な時間をかけて説明してくれること」32.8%、「予算や希望条件に合わせて無理な提案をしないこと」30.0%でした。
調査の概要:全国の20〜65歳の男女5,000名/インターネット調査/2026年7月30日〜8月5日。住まいの購入や賃貸も含む設問で、売る方だけの数字ではありません。出典:全宅連『2026 住宅居住白書』公式PDF(誌面 p.27)
売る側にとっても、同じことが言えると思います。注意点を聞くこと、署名の前に時間をとること、無理だと思う提案には「待ってください」と言うことは、遠慮しなくてよいことです。契約書のどこを読めばよいかは、空き家を売るときの注意点|契約の前に確かめる3つでお伝えしています。
🗓️ 売るまでの段取り
この順番で確かめると、あとで迷いにくくなります
名義を確かめる
家と土地の名義が、今だれになっているかを確かめます。相続した家なら、相続登記が済んでいるかも見ます。
期限を日付で書き出す
相続が始まった日から、税の特例の期限と、相続登記の期限を数えてカレンダーに書きます。特例を使えるかどうかは、税理士か所轄の税務署に相談します。
家族で方針を話す
親御さんがご存命なら、まず親御さんのお気持ちを聞きます。相続した家なら、相続人全員で、売るか残すかを話します。
手取りで比べる
売る・残す・解体してから売る、それぞれで最後にいくら残りそうかの見立てを聞きます。見立ては、決めるためではなく、比べるためのものです。
署名の前に説明を受ける
契約書の案を前もって受け取り、分からない所を書き出して質問します。納得できるまで署名しなくて大丈夫です。
👣 お一人でもできること
今日からできる確認
全部を一度に済ませなくて大丈夫です。できるところから一つずつ進めてください。
❓ よくあるご質問
Q. 売ったあとで気が変わったら、契約をやめられますか
契約のあとでやめられるかどうか、やめるときにどんな条件がつくかは、契約書で決まります。だからこそ、署名の前に、契約をやめるときの条項を読んでおくことが大切です。読み方は空き家を売るときの注意点でお伝えしています。
Q. 売らずに持っておけば、後悔しないのではないですか
残すことも、一つの選び方です。ただ、空き家になった家の所有者には、周りの生活環境に悪い影響が出ないよう、適切な管理に努める責務があります(空家法第5条)。残すなら、誰がどう管理するかも一緒に決めておきます。空き家を放置したときの流れは、空き家を放置するとどうなるかでまとめています。
Q. 相続した空き家の特例は、自分でも使えますか
使えるかどうかは、相続の時期、家が建てられた時期、相続の前に誰が住んでいたかなど、いくつもの要件で決まります。この記事で判断することはできません。期限があるものなので、売る時期を決める前に、税理士か所轄の税務署にご相談ください。
📝 この記事のまとめ
- 「知っていれば別の選び方ができた」という後悔は、売る前に確かめることで減らせるものがあります
- 売値の高さだけでなく、売る・残す・解体してから売る、を「最後にいくら残るか」で比べます
- 相続した空き家の特例には期限が2つあり、早いほうが先に来ます。令和5年に相続が始まった方は、令和8年12月31日(2026年12月31日)です
- 売るには相続登記が必要です。親御さん名義の家は、親御さんが売ります。判断能力が十分でなくなったあとは、家庭裁判所の手続きが関わります
- 家族の気持ちをそろえ、署名の前に説明を受けます。注意点を聞くことは、遠慮しなくてよいことです
実家は、長く家族を守ってきた場所です。次のオーナー様へ引き継ぐなら、あとで振り返ったときに「あのとき確かめてよかった」と思える形で送り出したいものです。どこから確かめればよいか分からないときは、いまの状況を伺うところから、一緒に考えます。
本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、2026年9月時点の法令と、国税庁・法務省・裁判所・全宅連の資料に基づく一般的な説明です。税の特例は税理士・所轄の税務署に、登記は司法書士・弁護士に、成年後見は家庭裁判所にご確認ください。最終更新日:2026-10-02。
売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。