こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
「更地にして引き渡します」と約束しても、庭木や庭石、ブロック塀、土間のコンクリート、地面の下の古い基礎や配管を、どこまで撤去するのか。思い浮かべる範囲は、売る方と買う方で違うことがあります。
結論から申し上げます。「更地」の範囲は法律で決まっておらず、契約で決めます。「一切を解体・撤去」とだけ書いた約束で、範囲が裁判で争われた例もあります。
この記事では、当社が2026年3〜8月に作った建物解体の見積書16件に、どんな撤去の項目が入っていたかをもとに、残す物・撤去する物を決めるときの確認点をお伝えします。
💡 「更地」の範囲は、契約で決まります
「更地」には、国土交通省の不動産鑑定評価基準に「建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地」という定義があります。ただ、これは土地の価格を評価するための分類で、売買で「どこまで撤去するか」までは決めていません。
「一切を撤去」と書いた約束でも、「新しい建物や工作物を建てるのに支障がない程度」と読まれた例があります。個人どうしの土地の売買で、「旧建物、工作物及び立木等の一切を解体・撤去」するという約束があった例です。裁判所は、この約束の目的を、買主が新しい建物や工作物(塀や車庫など)を自由に建てられる状態にすることだとして、売主が負うのは、その建設に支障が出ない程度に解体し、出たがれきを撤去することだと判断しました。
そのうえで、買主の請求のうち認められたのは、境界の塀の基礎のうち売主が頼んだ業者が残した部分の撤去と、そこから出たがれきを片付ける費用だけでした。契約のときに売主も買主も知らなかった、隣の土地の塀の基礎が売った土地にはみ出していた(越境していた)部分や、植栽のための土の入れ替えは、売主の約束に含まれないとされました(東京地裁令和2年11月26日判決。2020年4月の民法改正より前の契約。不動産適正取引推進機構〔RETIO〕の機関誌の紹介記事による)。
反対に、更地渡しの中身を覚書で細かく決めていた例もあります。境界にある工作物は基礎まで撤去する、浄化槽があれば撤去して土で締め固める、樹木や竹は根まで抜く、越境している木は切る、地中から隠れたものが出たら売主の責任で撤去する、といった内容です。売主(法人)が工事をしなかったため、買主が自分で工事会社に頼み、一審では、その工事代金などの賠償が認められました(東京地裁令和5年3月30日判決。控訴審で和解。RETIO の紹介記事による)。
範囲をはっきり書くには、売主の方も、その範囲の撤去にどれくらいかかるかを先に知っておく必要があります。紹介記事の解説者も、売主は更地にする見積もりを取って採算を考えたうえで、求められた内容で売るかを判断する必要があった、と述べています。見積もりを先に取ることは、約束の範囲を決めるための準備でもあります。
📊 当社の見積書16件に入っていた撤去の項目
当社が2026年3〜8月に作った建物解体の見積書16件(案件ごとに数えたもの)を開き直して、建物本体の解体とは別に立てている撤去の行を数えました。「更地にする」と一口に言っても、見積もりの上では、敷地の中の物ごとに行が分かれています。

| 項目 | 入っていた件数 | 何のことか |
|---|---|---|
| 混合がれき類の撤去 | 16件 | 建物本体の解体とは別の行(付帯工事の中)で見積もるがれき |
| 庭木の伐採・伐根 | 14件 | 伐採は幹を切ること、伐根は根を掘って取り除くこと |
| 土間コンクリートの撤去 | 14件 | 地面に打ったコンクリート。1件は行だけで数量は空欄 |
| ブロック塀(CB塀)の撤去 | 13件 | 面ごとに行を分ける。1件は上の3段だけ切って下の5段を残す見積もり |
| 倉庫・小屋の撤去 | 10件 | 木造・スチール・ブロック造の倉庫、木造の小屋など |
| 庭石・灯籠の撤去 | 9件 | |
| カーポートの撤去 | 6件 | |
| 汲み取り便槽・浄化槽の撤去 | 4件 | 4件とも、汲み取りの費用は別 |
| 井戸のお祓い・埋め戻し(見積もりの中) | 3件 | ほかの13件は「別途」の欄 |
| 雑草の撤去 | 3件 | |
| 擁壁・石積みの撤去 | 1件 |
上の数は、その撤去の行が見積書にあった件数です。行の多くは見積ソフトのひな型に最初から並んでいて、現場に合わせて残したり、数量を入れたりしています。行がないからといって、その現場にそれがなかったとは限りません。ご自宅の敷地に何があるかは、見積もりのときに現地で一つずつ確かめます。
もう一つ、16件すべてにある行が「宅地粗整地・トラロープ張り(重機転圧)」です。建物と付帯の物を撤去したあと、重機で土地をならし、ロープを張って区切る、という行で、ひな型でも最初から入っています。見積書の工事名も、当社の書式では「〇〇解体更地工事」です。ただ、見積書の「更地」と、売買契約の「更地渡し」の範囲が同じとは限りません。契約のほうで、別に決めておきます。
合計の下の「別途」の欄には、見積もりの金額に入れていないものを並べています。どれも見積ソフトのひな型に最初から入っている行で、16件の見積書では次のとおりでした。
| 別途の欄の行(見積書の表記) | 何のことか | 16件中 |
|---|---|---|
| ※本見積以外の工事はご協議をお願いします。 | 見積書に書いていない工事は、あらためてご相談 | 16件 |
| 隣接家屋調査費用は別途 | 工事の前の、お隣の建物の調査 | 16件 |
| 生活残置物廃棄物処分は別途 | 家の中に残った家具・家電など | 15件 |
| 井戸水神上げお祓い費用(埋戻し共) | 井戸を埋め戻す前のお祓いと埋め戻し | 13件 |
| 地下埋設物及び瓦礫類撤去(運搬処分1台あたりの単価) | 地面の下から出た古い基礎・がれきなど | 16件 |
| 交通誘導員は別途 | 道路での車や人の誘導 | 16件 |
| 残土鋤取り・埋戻しは別途 | 土のすき取り・埋め戻し | 16件 |
| アスベスト撤去費は別途(外壁塗材・内部成形板等) | 石綿を含む建材の撤去 | 16件 |
見積書を受け取ったら、合計の数字だけでなく、この「別途」の欄を読んでください。ここに書かれた物が、更地渡しで売主の方の負担になりうる部分です。
🧱 ブロック塀:境界の塀は、お隣との共有かもしれません
敷地の境にあるブロック塀は、注意が要ります。境界線の上に設けた塀は、お隣と共有しているものと推定されます(民法第229条)。撤去する前に、お隣と相談してください。境の塀のことは、解体の日取りを決める前に、お隣と話しておくと安心です。
当社の見積書16件のうち13件に、ブロック塀(CB塀)の撤去の行がありました。塀は面ごとに行を分けていて、どの面の塀を撤去するかを決めています。1件は、塀の上の3段だけを切って、下の5段を残す見積もりでした。「全部撤去」だけでなく「一部を残す」も選べます。
ブロック塀の撤去には、補助を設けている市町村があります。補助の率や上限、対象になる塀は市町村ごとに違い、市内の業者に頼むことを条件にしているところもあります(下のよくあるご質問で触れます)。当社のブロック塀解体のページもあわせてご覧ください。
🌳 庭木・庭石:残すなら、枝と根のことも
庭木は、16件のうち14件に「植木植栽伐採伐根撤去」の行がありました。伐採は幹を切ること、伐根は根を掘って取り除くことです。残す木・切る木に加えて、「根まで抜くか」も一覧に書いておきます。庭石・灯籠の撤去の行は9件にありました。
木を残すときは、その枝や根がお隣にはみ出していないかも見ておきます。民法では、木の枝が境界線を越えているとき、お隣は木の持ち主に枝を切るよう求めることができ、一定の場合は自分で切ることもできます。根が越えているときは、お隣がその根を切り取ることができます(民法第233条)。はみ出しているなら、引き渡しの前に買主へ伝えておくと、買主の方も引き継いだ後の段取りを立てやすくなります。
🕳️ 地面の下から出てくるもの:見積書では「別途」です
地面の下から出てくるものは、見積書の中で扱いが変わります。当社の見積書では、地中から出てくる古い基礎やがれき(地下埋設物及び瓦礫類)の撤去は、16件すべてで見積もりの金額に入れず、合計の下の「別途」の欄に「運搬処分1台あたり」の単価だけを書いていました。残土のすき取りや埋め戻しも、同じ欄で別途です。地面の下は、掘ってみるまで分からないからです。
告知書に「見つけていない」と書いたことは、「何も埋まっていない」という約束とは違います。告知書(物件状況等報告書)は、売主が知っていることを買主に伝えるための書類です。個人どうしの売買で、売主が売る前に解体し、残すことにした塀が倒れないよう塀の近くは掘らなかった土地の例では、引き渡しの後、塀沿いの地中から使われていない排水管が見つかりました。
裁判所は、告知書の「地中埋設物を発見していない」は売主の認識を示したものにとどまり、土地全体に何も埋まっていないことまでは契約の内容とは言えないとして、買主の請求を認めませんでした。排水管が解体のときに当然掘るべき場所になく、住宅の建築の大きな支障にもならなかったことも理由です(東京地裁令和5年11月6日判決。RETIO の紹介記事による)。ただ、これは個別の事情による判断で、「告知書に書けば責任を免れる」という意味ではありません。どこを掘って、どこを掘らなかったかを伝えておくことが、売る方・買う方の双方にとって大事です。
浄化槽や汲み取りの便槽の撤去は、16件のうち4件に行があり、4件とも汲み取りの費用は別と書いていました。井戸は、13件で「井戸水神上げお祓い費用(埋め戻し共)」を別途の欄に置き、3件は見積もりの中に入れていました。井戸を埋め戻す前のお祓いについては水神上げの記事でお伝えしています。
📦 家の中の物:解体の前に片付けます
家の中の家具や家電、衣類などは、解体の前に片付けます。環境省の通知は、建物の解体のときに所有者などが残したもの(残置物)の処理の責任は建物の所有者などにあり、解体の前に適正に片付ける必要がある、としています。解体で出るもの(解体物)の処理の責任が、工事を直接請け負った元請業者にあるのとは分けて考えます。
一般の家庭から出た残置物は一般廃棄物で、産業廃棄物の許可だけでは処理を請け負えません。回収を頼むなら、市町村から委託を受けた業者か、一般廃棄物の処理の許可を持つ業者に頼むことになります(同じ通知)。たとえば福岡市は、家財などの回収を人に頼むなら、市の一般廃棄物収集運搬業の許可業者に頼むよう呼びかけています。
✅ 一人でもできること:「残す物・撤去する物」の一覧を作る
見積もりを頼む前に、ご実家の敷地を一回りして、次の一覧に印をつけてみてください。スマートフォンなら画面を開いたまま回るか、紙に写して持っていくと使いやすいです。この一覧は、解体の見積もりの依頼と、売買契約の「更地」の中身の両方に使えます。ご兄弟と話し合うときのたたき台にもなります。
残す物・撤去する物の一覧(撤去するなら、どこまでかも)
迷う物は「迷っている」と書いておけば十分です。見積もりのときに、現地で一緒に決められます。
❓ よくあるご質問
Q. 更地にしたあと、そのまま家を建てられる状態になりますか
当社の見積書には、付帯工事の中に「宅地粗整地・トラロープ張り(重機転圧)」の行が最初から入っています。どこまで平らにするか、砕石や土を入れるかといった仕上がりの程度は、見積書には書いていません。家を建てる前に地盤の調査や造成が要るかどうかは、建てる方の計画によるので、買主と確かめてください。
Q. 買主から「そのままでいい」と言われました
買主が建物付きのままでよいなら、それは現況渡しです。口約束にせず、覚書などの書面にしておきます。一部だけ残す(塀は残す、など)なら、その物を契約書の「更地」の中身に書き加えます。家財や建物の不具合、引き渡しの前に建物が傷んだときの扱いも、契約で決めておきます。詳しくは現況渡しと更地渡しの違い|誰が何をするかでお伝えしています。
Q. ブロック塀の撤去に補助はありますか
市町村によってあります。たとえば福岡市は、補助率3分の2(1mあたり15,000円、上限30万円)です。ほかの市町村では、市内の業者に頼むことを条件にしているところもあります(筑紫野市・那珂川市・北九州市・福津市など)。対象になる塀や申請の時期は、それぞれの市町村の案内で確かめてください。
📝 この記事のまとめ
- 「更地」の範囲は法律で決まっておらず、契約で決めます。「一切を解体・撤去」と書いた約束が、裁判で「建物や工作物を建てるのに支障がない程度」と解された例があります
- 当社の見積書16件では、がれき・庭木・土間・ブロック塀の撤去の行が多く、地中から出てくる古い基礎やがれきと残土は、16件すべて合計の下の「別途」でした
- 境界の塀は、お隣との共有と推定されます。撤去する前に、お隣と相談します
- 庭木を残すなら、お隣にはみ出している枝や根のことも伝えておきます
- 「残す物・撤去する物」の一覧を作り、見積もりの依頼と売買契約の両方に使います
古家付き土地を売るときに読む3本(この順がおすすめです)
① 現況渡しと更地渡しの違い|誰が何をするか ― 渡し方を選ぶ
② 更地渡しはどこまで?庭木・ブロック塀・地中のもの(この記事) ― 撤去の範囲を決める
③ 古家付き土地の売却で起きやすいトラブル|防ぎ方 ― 契約書を確かめる
家とともに年月を重ねてきた庭木や塀を、残すのか、お別れするのか。見積もりのときに、現地で一つずつ確かめながら決めていけます。
本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事の見積書の数字は、当社が2026年3〜8月に作った建物解体の見積書16件(案件ごとに数えたもの)によります。ほかの会社や時期の見積書に当てはまるとは限りません。裁判例は、不動産適正取引推進機構(RETIO)の機関誌の紹介記事によります(判決の要旨は同機構の職員によるまとめで、2020年4月の民法改正より前の契約の例を含みます)。個別の事案についての判断で、同じ結論になるとは限りません。法令・公的機関の資料の説明は、2026年9月時点の一般的な内容です。ブロック塀の撤去の補助は、2026年9月23日に確認した各市町村の案内によります。個別の契約内容は、契約前に不動産会社からの説明でご確認ください。最終更新日:2026-09-25。
売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。