福岡で空き家やご実家の売却を考えている方に向けて、福岡都市圏24市区の売却相場を毎月お届けする連載の第2回です。2026年7月17日の調査から8月31日の調査までの45日間でいちばんはっきり見えたのは、売りに出たまま残っている土地1,913件のうち、値上げされたのは13件(0.7%)だけだった、ということでした。
売出し価格の中央値(値を順に並べたときの真ん中の値。極端に高い・安い物件に振り回されにくい見方です)が上がったエリアは、いくつもあります。ですが1件ずつ突き合わせてみると、それは並んでいる売り物の顔ぶれが入れ替わっただけでした。値下げの幅も、2か月続けて中央値およそ100万円・率にして約3.3%。前号(2026年7月号)から切れ目なく数え続けて見えてきたことを、順番にご覧いただきます。数字が苦手な方は、後半の『このデータをどう使うか』の章から読んでいただいても大丈夫です。
📊 この調査について(毎月更新の定点観測)
私たちサンミライ開発は、解体と不動産売却をワンストップでお手伝いする会社として、福岡市の7区と、その周辺の市や町、それに久留米市を加えた24の市区町(本レポートでは短く「24市区」と表記しています)(福岡市7区・久留米市・筑紫野市・春日市・大野城市・太宰府市・那珂川市・糸島市・古賀市・福津市・宗像市・糟屋郡7町)の戸建・土地の売出し情報を毎日集計しています。
公開されている情報をもとにした独自調査で、常時売り出し中の約8,700件を追いかけています。なお、解体や売却のご相談自体は福岡県・佐賀県の全域で承っています。このレポートは、市場の動きを毎日追いやすい福岡都市圏に絞って観測しているものです。
今回の観測期間は2026年7月17日〜8月31日です。7月17日の調査時点を起点に、8月31日の調査時点までの経過45日間の動きを数えました。第1号(6月30日〜7月17日の17日間)の最終日から切れ目なく続けています。実際の成約価格については国土交通省 不動産情報ライブラリの2023〜2025年の宅地(土地)取引データを使用しています。個別の物件や取扱会社の情報は扱わず、市区単位の集計のみを掲載します。
先月との比較で気をつけていること — 誤差と本当の変化の見分け方
第1号は17日間、今回は45日間。観測した日数が違うので、合計件数をそのまま並べると「今月は2倍以上動いた」という誤った読み方になってしまいます。そこで前号との比較は、1日あたりの件数にそろえるか、暦の月末どうしで比べるようにしています。もうひとつ気をつけているのが、日ごとの振れです。今回でいえば、売り物が1日で32件減った日もあれば、62件増えた日もありました。
この振れで説明できてしまう程度の差を「先月から変わった」と書くと、お読みいただく方の判断を誤らせてしまいます。そこで本号では、前号との差が日々の振れの範囲に収まるかどうかを確かめたうえで、収まってしまうものは「変化」として書かないことにしました。実際、新着・値下げ・退出のいずれも、1日あたりで見た先月との差は振れの範囲に収まっています。
📈 2026年8月の市場の動き — 新しく2,917件・値下げ2,668件・市場から消えたのが2,591件
まず、45日間で市場がどれだけ動いたかの全体像です。
売出し中の物件が常時約8,700件あるなかで、45日間に2,600件規模の「値下げ」と「退場」が同時に起きています。福岡都市圏の戸建・土地の市場は、静かに見えて思った以上に新陳代謝の速い市場である——第1号でお伝えしたこの見立ては、今回も変わりませんでした。
ちなみに、この45日間に確認できた戸建・土地を通じた値上げは、延べ128件でした(値下げは延べ2,668件)。ただしこの数字は、前号と並べて増減を語れるものではありません。第1号の値上げ70件は、そのうち27件が7月2日の1日に集中していました。こうした一括の価格改定が1日入るだけで月の合計が大きく変わってしまうため、値上げについては水準だけをお伝えし、前月との比較はしないことにしています。
売り物の数は、2か月続けてほぼ同じペースで増えています
図のとおり、増え方は7月も8月もほぼ同じでした。新しく入ってくる数が、出ていく数をわずかに上回る状態が続いている、ということになります。
なお、上のグラフは月末どうしで並べています。レポートの観測期間の区切り方(今回は7月17日〜8月31日)に左右されない見方をお見せするためです。観測期間で数えると、この45日間の増加は326件でした。どちらも同じ動きを別の区切り方で見たものです。日々の集計と月末の実数が一致することは毎号確認しています。
値下げの中身は、2か月続けて同じでした
値下げ2,668件の値下げ幅は、中央値でおよそ100万円、率にして約3.3%。第1号(1,031件)も中央値100万円・約3.4%でしたので、ほぼそのまま重なります(第1号の記事では約3.5%と書きましたが、本号と同じ数え方に揃え直すと3.4%です。「中央値100万円・3%台」という結論は変わりません)。そして値下げの約86%が戸建である点も、ほとんど動きませんでした(戸建には築浅のものも含まれます)。
値下げ幅の中央値
値下げ率の中央値
戸建の割合(土地より戸建が多い)
中央値とは、値を順に並べたときの真ん中の値のことです。極端に大きい・小さい物件の影響を受けにくいため、本レポートではこちらを使っています。
ただし、中央値が2か月続けて同じだったこと自体は、実はあまり驚くことではありません。中身を開けると理由が分かります。値下げ2,668件のうち、きっかり100万円の値下げが45.9%と最も多く、次いで200万円が20.6%。こうした100万円単位の値下げが全体のおよそ7割(72.1%)を占め、10万円単位まで広げると93.2%になります。
つまり本当に見えているのは「中央値がたまたま一致した」ことではなく、この市場では値下げが100万円という単位で刻まれているという値付けの習慣のほうです。こちらは2か月続けて同じ形でした。そして調整されるのは、そのほとんどが戸建です。古いお家付きの物件では、売り出したあとに価格を見直すケースが比較的多いのかもしれません。100万円という値下げ幅が大きいのか小さいのかは、木造・鉄骨別の解体費用の相場と並べてみると考えやすくなるかもしれません。
市場から消えた2,591件 —「成約または取下げ」
45日間で2,591件、1日あたり約58件が市場から消えました。ここには「買い手が決まった(成約)」と「売るのをやめた・仕切り直した(取下げ)」の両方が含まれ、公開情報ではこの2つを区別できません。この点は、本レポートを読むうえでいちばん大事な前提かもしれません。あるエリアで売り物が減っていても、それが「売れているから」なのか「あきらめて引っ込めたから」なのかは、私たちのデータでは判別できないのです。以降で市区ごとの増減をご紹介しますが、その数字はどちらの意味にもなり得る、とお含みおきください。
🔍 売りに出たまま残っている土地の値段は、ほとんど動いていません
ここが今回いちばんお伝えしたい発見です。あとでご紹介する一覧を見ると、売出し価格の中央値が先月より上がった市区がいくつもあります。福岡市早良区は坪62.8万円から70.1万円へ、糟屋郡篠栗町は坪32.0万円から37.2万円へ、といった具合です。ふつうに読めば「このエリアは値上がりしている」と思ってしまいます。
ですが、中央値は、並んでいる売り物の顔ぶれが入れ替わるだけで動きます。そこで今回、7月17日と8月31日の両方に載っていた土地だけを1件ずつ突き合わせて、同じ物件の値段が動いたのかどうかを直接調べました。
値段が変わっていない(87.1%)
値下げされた(12.2%)
値上げされた(0.7%)
結果は、両方の日に載っていた土地1,913件のうち、値上げされたのは13件(0.7%)だけでした。値下げされたのが234件(12.2%)、残る1,666件(87.1%)は価格が変わっていません。値段が動いた247件のうち、95%が下方向です。市区ごとに中央値を出して比べても、上がった市区はひとつもありませんでした。
なお、中央値が先月と1円も変わらなかった市区が13ありますが、これは「値段が保たれた」という意味ではありません。9割近い物件が動いていないため、真ん中の物件が動かなければ中央値も動かない——それだけのことです。実際、中央値が動かなかった筑紫野市や糟屋郡宇美町でも、1件ずつの平均で見ると2%あまり下がっています。中央値は「変わっていない」ことの証明には向かない道具だ、というのも今回の学びでした。
図の早良区の例をご覧ください。ずっと売りに出ている68件の中央値は、坪59.6万円から59.1万円へとほとんど動いていません。中央値を押し上げたのは、この間に新しく出てきた41件のほうで、その中央値は坪79.1万円でした。早良区では、もともと高い土地が新しく出てきたのが実際です。
ところが、同じように中央値が上がった糟屋郡篠栗町では、事情が逆でした。ずっと売りに出ている14件の中央値は坪38.2万円のまま動かず、この間に消えた5件(坪29.7万円)も、新しく出てきた7件(坪32.9万円)も、それより安い物件です。安い売り物が抜けたぶん、残った側の中央値が高く見えている——同じ「上がったように見える」でも、中身はエリアごとに違います。共通しているのは、どちらも「同じ物件の価格が大きく上がったせいで中央値が上がった」わけではないという一点です。
なお、いったん掲載が終わって番号が変わってから出し直された物件は、この突き合わせには含まれていません。その分、「価格が変わっていない」の割合はやや高めに出ている可能性があります。
この見方は、相場表を読むときにそのまま使えます。「◯◯区の坪単価が上がった」という数字を見たら、それが「同じ物件を追いかけた数字」なのか、それとも「並んでいる売り物を数え直した数字」なのかを確かめてみてください。この2つは、まったく別のことを言っています。毎月同じやり方で数え続けているからこそ、この切り分けができるようになりました。1回きりのデータでは見えてこなかったことです。
💰 売出し価格と実成約価格の差 — 24市区の実測
ここからは、売出し価格が実際の成約価格とどれくらい離れているかを見ていきます。売出し価格はあくまで売主の希望価格であり、実際に取引が成立した成約価格とは別のものです。この2つの差をエリアごとに測ると、「そのエリアの売出し価格が、実勢と比べてどのくらいの位置にあるか」の目安が見えてきます。
今回は、売出し側を2026年8月31日時点の宅地の土地(家を建てられる土地・面積50〜660㎡)に絞り、国土交通省が公表している実際に取引された価格のデータ(2023〜2025年の中央値。以下このレポートでは「実成約」と呼びます)と、坪単価(1坪=約3.3㎡あたりの価格)で比べました。ただし、比べている時期がずれている点にご注意ください(成約は過去3年、売出しは現在)。
地価が上がっている地域では差が大きく見えやすく、下がっている地域では小さく見えたりマイナスに出たりします。あくまで大まかな傾向をつかむための参考としてご覧ください。
なお、比較の相手に使っている国土交通省の成約データを、2026年8月26日に最新版へ更新しました。前号の記事に載せた差の数字とは、ものさしが違います(先月との比較は、前号の時点も新しいものさしで計算し直しています。詳しくは章の終わりの注をご覧ください)。
差が大きかったエリア(上位10市区)
なお、このグラフからは売出し中の土地が10件に満たない糟屋郡新宮町(7件・+21.2%)と久山町(5件・+20.0%)を除いています(数件の出入りで数字が大きく動くため)。両町の数字は後半の全24市区の一覧に載せています。
上位に糟屋郡の町が並びました。第1号でも須惠町・粕屋町が1位・2位でしたので、この並びは2か月続いていることになります。ただし糟屋郡の各町は、比較に使った売出し中の土地が5〜45件と少なく(上位に並んだ須惠町26件・粕屋町19件・宇美町45件・篠栗町21件)、数件の出入りで中央値が動きやすい点にはご注意ください。なお、須惠町については解体費用や空き家対策をまとめた解説記事もあわせてご覧ください。
糟屋郡(志免・須惠・粕屋)で売り物が減少 — ただし値上げは0件
市区ごとの在庫の増減を並べてみると(売り物の実数どうしを比べています)、この45日間で売り物の数が減ったのは24市区中6市区でした(糟屋郡志免町−20件・糟屋郡須惠町−18件・宗像市−14件・糟屋郡粕屋町−13件と、宇美町・久山町)。6市区のうち5つが糟屋郡です。一方で同じ糟屋郡でも、篠栗町は+16件、新宮町は+13件と増えており、郡内でも方向は分かれています。市区ごとの増減は、後半の全24市区の一覧にすべて載せています。
その糟屋郡は、売出し価格と実成約価格の差でも上位に並びます。ここから「売り物が減っているのに値付けは強気」という物語をつくりたくなるところですが、数字はそこまで言っていません。実際に確かめると、須惠町・粕屋町・志免町では、この45日間で戸建・土地を通じて値上げが1件も起きていません。売りに出たまま残っている土地の値段も、須惠町は坪29.1万円のまま、宇美町は坪20.7万円のまま動いていません。
差が大きく見える背景としては、①比べる相手の成約データが2023〜2025年の3年分で、この間に上がった地域ほど差が開いて見えること、②新しく出てきた物件の価格帯が影響している可能性があること、③そもそも件数が5〜45件と少なく振れやすいこと、などが考えられます。そして先ほど申し上げたとおり、売り物が減った理由が「売れた」のか「引っ込めた」のかも、私たちには区別できません。
どちらなのかは、来月・再来月と数え続けてはじめて見えてくることだと考えています。
差がマイナスのエリアは「割安」とは限りません
逆に、売出し中央値が実成約中央値を下回ったエリアもあります(福岡市中央区−33.6%・久留米市−25.0%・福岡市西区−13.2%・太宰府市−13.1%など)。これは「今売られている土地がお買い得」という意味ではなく、条件の良い人気の土地は早く売れてしまうため、市場に長く残るのは少し条件の難しい土地が多くなるという、在庫の質の違いを映している可能性があります。
たとえば久留米市は、今回の比較に使った売出し中の土地だけでも682件と24市区で最も多く、選択肢が豊富な分、長く残っている物件も多く含まれます。マイナスの数字は「掘り出し物のサイン」ではなく「見極めがより大切なエリアのサイン」と読むのが実態に近いと考えています。
この数字の読み方 — 4つの注意点
- 時点が違います — 実成約は2023〜2025年の3年分の中央値、売出しは2026年8月31日時点です。地価が上がっているエリアでは、差が実際より大きく見えることがあります。
- 絞り込みの条件が一部違います — 面積50〜660㎡の宅地(土地)という点は両方そろえていますが、売出し側だけ「用途地域の定めがあり、市街化調整区域と工業専用地域を除く」という絞り込みを掛けています。この差には集計条件の違いも含まれます。
- 中身が違います — 売り出し中の土地と、実際に取引された土地では、立地や形・広さの構成が同じではありません。中央値どうしの比較は「傾向」を見るための道具です。
- 件数が少ないエリアは振れます — 取引や売出しの件数が少ないエリアの数字は参考程度にお考えください。今回でいえば糟屋郡の各町がこれにあたります。
ですから、この一覧は「須惠町なら半額で買える」という意味ではありません。実際の価格は、一つひとつの土地の条件(接道・形・再建築の可否・周辺環境)で決まります。この一覧が示すのは、あくまでエリアごとの「希望価格と実勢の距離感」のおおよその位置です。
全24市区の売出し価格と実成約価格の一覧
以下が全24市区の数字です。福岡市の7区 → 筑紫地区 → 糟屋郡7町 → 糸島・古賀・福津・宗像 → 久留米市の順に並べていますので、ご自身の市区をお探しください。右端の「売り物の増減」は、7月17日から8月31日までに売り出し中の件数がどれだけ増えたか・減ったかです。
| 市区 | 売出し中央値(件数) | 実成約中央値(件数) | 差 | 売り物の増減 |
|---|---|---|---|---|
| 福岡市東区 | 48.2万円(178) | 45.0万円(361) | +7.1% | +35件 |
| 福岡市博多区 | 127.1万円(43) | 110.0万円(196) | +15.5% | +36件 |
| 福岡市中央区 | 132.8万円(66) | 200.0万円(154) | −33.6% | +18件 |
| 福岡市南区 | 53.0万円(169) | 51.0万円(265) | +3.9% | +54件 |
| 福岡市城南区 | 62.0万円(63) | 55.0万円(143) | +12.7% | +14件 |
| 福岡市早良区 | 70.1万円(109) | 63.0万円(261) | +11.3% | +36件 |
| 福岡市西区 | 40.8万円(99) | 47.0万円(213) | −13.2% | +3件 |
| 春日市 | 58.6万円(85) | 44.0万円(124) | +33.2% | +60件 |
| 大野城市 | 45.8万円(100) | 41.0万円(157) | +11.7% | +22件 |
| 太宰府市 | 27.8万円(87) | 32.0万円(155) | −13.1% | +33件 |
| 筑紫野市 | 27.6万円(98) | 30.0万円(175) | −8.0% | +17件 |
| 那珂川市 | 32.6万円(53) | 32.0万円(59) | +1.9% | +15件 |
| 糟屋郡宇美町 | 23.3万円(45) | 16.0万円(41) | +45.6% | −3件 |
| 糟屋郡篠栗町 | 37.2万円(21) | 27.0万円(48) | +37.8% | +16件 |
| 糟屋郡志免町 | 32.5万円(20) | 33.0万円(47) | −1.5% | −20件 |
| 糟屋郡須惠町 | 29.5万円(26) | 15.5万円(52) | +90.3% | −18件 |
| 糟屋郡新宮町※ | 41.2万円(7) | 34.0万円(50) | +21.2% | +13件 |
| 糟屋郡久山町※ | 15.6万円(5) | 13.0万円(17) | +20.0% | −1件 |
| 糟屋郡粕屋町 | 54.3万円(19) | 35.0万円(59) | +55.1% | −13件 |
| 糸島市 | 19.4万円(212) | 16.5万円(244) | +17.6% | +5件 |
| 古賀市 | 30.6万円(43) | 29.0万円(76) | +5.5% | +8件 |
| 福津市 | 22.5万円(95) | 19.0万円(169) | +18.4% | ±0件 |
| 宗像市 | 11.8万円(136) | 16.0万円(166) | −26.2% | −14件 |
| 久留米市 | 12.0万円(682) | 16.0万円(535) | −25.0% | +10件 |
最後に、前号の記事と数字を見比べる方のための注記です。
そのため、前回(7月号)の記事に載せた差の数字と、今回の数字は、ものさしが違います。今回は先月との比較を出すために、前回時点の数字も新しいものさしで計算し直しています。前回の記事の数字とそのまま見比べないでください。
🏘 売り物が増えたのはどこか — 春日市・福岡市南区・博多区で在庫増
売り物が減った6市区町とは反対に、売り物が増えた市区もあります。増加が大きかったのは件数で春日市(+60件)・福岡市南区(+54件)・福岡市早良区(+36件)・福岡市博多区(+36件)でした。もとの在庫に対する割合で見ると、博多区が3割増と最も大きく増えています。
なかでも春日市は、この45日間で126件が1回以上値下げされていました。8月31日時点の売り物349件に対して、およそ3分の1にあたりますただしこの126件には期間中に市場から消えた物件も含まれるため、「いまの在庫の3分の1が値下げ済み」という意味ではありません。売り物が増え、同時に価格の調整も進んでいるエリアと言えそうです。
🏚 築40年以上の戸建652件・古家付き土地1,309件 — 在庫の現在地
2026年8月31日時点で売り出し中の8,690件のうち、築40年以上の戸建が652件、古家付きの土地が1,309件。あわせて全体の22.6%が「築古・古家」に関わる物件です。第1号(7月17日時点)でも22.8%でしたので、第1号の観測を終えた7月17日時点の8,364件から8,690件へ326件増えても、築古の比率はほとんど動いていません。売り物の総数は動いても、その中身の構成は変わりません。ここも定点観測ならではの見え方です。
売り物の多い市区の内訳もご覧ください。
| 市区 | 売出し中の物件数 | うち築40年以上の戸建 | うち古家付き土地 |
|---|---|---|---|
| 久留米市 | 1,701件 | 196件 | 284件 |
| 福岡市南区 | 781件 | 47件 | 107件 |
| 福岡市東区 | 721件 | 26件 | 106件 |
| 糸島市 | 703件 | 37件 | 66件 |
| 福岡市早良区 | 512件 | 27件 | 68件 |
築40年以上ということは、1980年代半ば以前に建てられたお家です。戸建に占める築40年以上の割合を市区別に見ると、久留米市が約32%、太宰府市と宗像市が約26%と高くなっています。また、土地の売り物が100件以上ある市区(ここでは絞り込み前の土地全体で数えています)では、福岡市南区・大野城市・太宰府市・福岡市東区で売り土地のおよそ半分が古家付きです。
ご家族の世代交代や相続と重なる時期でもあり、この層の物件が今後も市場に出てくるケースは続く可能性があります。私たちは、こうしたお家の解体を「壊す作業」ではなく、長年ご家族を支えてきた建物への感謝とともに次の暮らしへ受け渡す準備と捉えてお手伝いしています。また、古いお家の解体は、騒音や振動、粉塵など、どうしても近隣の皆様にご負担をおかけする工事です。だからこそ一件一件、丁寧に取り組んでまいりました。
🏠 空き家の税金と相続登記は、いまこうなっています(2026年9月時点)
ここまで数字を見ていただきました。最後に、なぜ私たちが毎月これを数え続けているのかに触れておきます。空き家や古いお家をめぐる制度が、この数年で続けて変わってきたからです。売る・持ち続ける・活用するの判断を、先送りしにくくなる方向の変化が続いています。第1号でご紹介した制度に加えて、2026年に入って新しく始まったものもありますので、あわせてご紹介します。
空き家を「持ち続けるコスト」と、相続登記の義務化
「空家等対策の推進に関する特別措置法」の改正法(令和5年12月13日施行)で、倒壊などの危険がある「特定空家」の手前の段階として「管理不全空家」という区分ができました。
管理が行き届いていない空き家は、市区町村長の勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(200㎡以下の部分で課税標準が6分の1になる軽減)の対象から外れる場合があります(出典: 国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報)。また令和6年4月1日からは相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の登記が必要になりました。
正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象で、過去の相続分も令和9年3月31日までの登記が求められます(出典: 法務省 相続登記の申請義務化について)。さらに令和8年4月1日からは、所有者の住所・氏名の変更登記も義務化されています。変更の日から2年以内が原則で、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になり得ます。
義務化前の変更も対象で、令和10年3月末までの登記が求められます(出典: 法務省 住所等変更登記の義務化)。それぞれの制度のより詳しい解説は第1号にも書いていますので、あわせてご覧ください。
2026年2月から「所有不動産記録証明制度」が始まりました
今回あらためて一次情報を確認するなかで、相続に直結する新しい制度が始まっていることが分かりました。令和8年2月2日から始まった「所有不動産記録証明制度」です。特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、法務局が一覧にして証明してくれる制度で、所有権の登記名義人ご本人や、その相続人の方などが請求できます(手数料は書面請求で、検索条件1件につき1通1,600円)。
「実家のほかにも、父が持っていた土地があるかもしれない」——相続のご相談でよく伺うお声です。そうした場合に、登記が必要な不動産を把握しやすくなると考えられます。なお法務局は、検索条件が登記記録上の氏名・住所と異なる場合には抽出されないことがある、とも案内しています。名義まわりを整えておくことの意味は、ここにもあります。
ご自身のケースで使えるかどうかは、法務局や司法書士にご確認ください(出典: 法務省 所有不動産記録証明制度について)。
🤔 このデータをどう使うか — 福岡で空き家・実家を売る方/買う方へ
空き家・ご実家を売りたい方へ
「いくらで売り出せばよいのか分からない」——売却のご相談で多くいただくお声です。今回の数字が示すのは2つです。ひとつは、強気の売出し価格は値下げで調整されやすく、その調整はおよそ100万円・約3%きざみで進むということ。2か月続けて同じ形でした。もうひとつは、いま売りに出ている土地の値段が、この45日間ほとんど動いていないということです。
「もう少し待てば上がるかもしれない」という判断の材料としては、少なくともこの45日間のデータは追い風になっていません。最初の価格設定を実勢に寄せるか、時間をかけてじっくり売るか。どちらが正解ということではなく、「いつまでに現金化したいか」と「持ち続けている間の維持費」の2つを並べて考えると、ご自身に合うほうが見えやすくなります。
また、古いお家付きの場合は「古家付きのまま売る」「解体して更地で売る」の2つの道があり、手元に残る金額はケースで変わります。私たちは解体と不動産の両方を自社で手がけているため、両方のパターンを試算して比べるお手伝いができます(ご相談・お見積りは無料です)。相続されたお家なら、まず登記の状況確認(相続登記の義務化への対応)から始めるのがおすすめです。
なお、売却価格が比較的低い土地については、低未利用土地等を売ったときに、売却で得た利益(長期譲渡所得)から100万円を控除できる特例があります。適用期限は令和10年12月31日までに延長されました。都市計画区域内にあること、売買価格の総額が500万円以下(市街化区域など政令で定める一定の区域内では800万円以下)であること、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること、市区町村の確認書が必要なことなど、いくつかの要件があります。ここで見ていただきたいのは坪単価ではなく、売買価格の総額です。
参考までに、2026年8月31日時点で売り出し中の土地の価格を見ると、久留米市は中央値880万円で500万円以下が26.8%、宗像市は中央値890万円で37.2%でした。少なくともこの2市では、坪単価が比較的低くても総額500万円以下に収まる売り物は3〜4件に1件程度という状況です。ご自身が対象になるかどうかは、税務署や税理士にご確認ください(出典: 国土交通省 土地の譲渡に係る税制)。
土地・古家を買いたい方へ
売出し価格と実勢の差のデータは、「価格交渉の余地はエリアによって違う」ことを知るおおよその目安になります。ただし今回はっきりしたとおり、売りに出たまま残っている物件の値段は、そう頻繁には動きません。両日に載っていた1,913件のうち、45日間で値下げされたのは12.2%、値上げは0.7%、残る87%は価格が変わっていませんでした。
動くときはほぼ下方向(動いた247件の95%)ですが、8件に7件は動かないまま45日が過ぎています。「待っていればこの物件も下がる」と当て込むより、いま出ている条件で判断できるかどうかを見るほうが、見通しを立てやすいかもしれません。また、繰り返しになりますが、実際の適正価格は物件ごとの条件次第です。
特に築古の戸建や古家付き土地は、再建築の可否・接道・地中埋設物・解体費の見込みなど、価格に効く確認事項が多くあります。データで当たりを付けて、現地と登記で確かめる。この順番でご検討いただくのが安全です。
🔗 出典・関連情報
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ(実成約価格の出典)
- 国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
- 法務省 相続登記の申請義務化について
- 法務省 住所等変更登記の義務化
- 法務省 所有不動産記録証明制度について
- 国土交通省 土地の譲渡に係る税制(低未利用土地等の100万円控除)
- 第1号(2026年7月号のレポート)(本号の比較の起点)
✅ まとめ — 2026年8月の福岡の空き家相場と、2回目で見えてきたこと
第2回のレポートをまとめます。①売りに出たまま残っている土地は、この45日間ほとんど値段が動きませんでした(値上げは1,913件中13件)。7月17日と8月31日の両方に載っていた土地だけを市区町ごとに比べると、坪単価の中央値が上がった市区町はひとつもありませんでした。中央値が上がって見えるエリアは、並んでいる売り物の顔ぶれが入れ替わったためです。
②値下げの中身(中央値およそ100万円・約3.3%・その約86%が戸建)は2か月続けてほぼ同じで、これはこの市場の「型」と呼べそうです。③売り物の数は7月・8月とも1か月あたり280〜290件のペースで増え続けており、築古・古家の比率は22%台で安定しています。
そして、いちばんお伝えしたかったのは④かもしれません。1回のデータでは分からないことがある、ということです。第1号だけを見ていたら、私たちは早良区や篠栗町の数字を見て「このあたりは上がってきた」と読んでいたかもしれません。2回目を数えて、同じ物件を1件ずつ突き合わせてみて、はじめてそうではないと分かりました。数字は答えではなく、「今どのあたりにいるか」を知るための道具です。最後の判断は、お家ごとの条件とご家族の暮らしに合わせて行うものだと考えています。
このレポートは毎月続けます。数字の変化を一緒に眺めながら、ご自身のお家の「ちょうどいいタイミング」を考える材料にしていただけたらうれしいです。表に載せていない細かい数字も含めて全24市区分を集計していますので、ご自身のエリアの数字を詳しく知りたい方や、「古家付きで売る」「更地にして売る」の手残り比較を試算したい方は、無料相談で個別にご案内しています。
最終更新日: 2026-09-03
本記事は2026年度の制度と、当社独自調査・公的データに基づく解説です。市場のデータは2026年8月31日時点、制度の内容は2026年9月3日時点のものです。市場の状況は日々変わります。税や登記のご判断は税務署・税理士・法務局・司法書士に、実際の売買のご判断は個別の物件調査・査定に基づいてご確認ください。