こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
「片付けも修理もできていないけれど、このまま売れますか」。空き家になった実家について、そう考える方は少なくないと思います。遠くに住んでいて、何度も通えない方ならなおさらです。
結論から申し上げます。空き家は、建物を残したまま売ることもできます。ただ、「そのまま」には3つの意味があり、それぞれで答えが違います。
- 家財を残したまま:売れるかどうかより、家財をどうするかを契約で決めておくことが大切です
- 古い建物を直さずに:直さずに売ることはできますが、知っている不具合は伝える必要があります
- 名義を変えずに:相続した家を売るときは、その前に相続登記が要ります
一つずつ見ていきます。
📋 「そのまま」の3つと、確かめること
| そのまま | できるか | 確かめること |
|---|---|---|
| 家財を残したまま | 契約の取り決めしだい | 残す物・持ち出す物と、片付けを誰がするかを契約で決める |
| 古い建物を直さずに | 直さずに売ることはできる | 知っている不具合を書き出して、買主に伝える |
| 名義を変えずに | 相続登記を済ませれば売れる | 相続登記が済んでいるか、期限はいつかを確かめる |
🪑 ① 家財を残したまま売れるか
家の中の家具や道具は、土地や建物を売れば当然に買主のものになる、とは言えません。
民法では、土地とその定着物が不動産で、それ以外の物は動産です(民法第86条)。また、持ち主が、ある物(主物)をふだん使うのに役立てるため、自分の別の物をそれに附属させたときは、その附属させた物を「従物」といい、主物を売れば、従物もそれに従います(第87条)。ただ、家財の一つひとつが定着物や従物に当たるかは、物ごとに判断されるもので、条文だけでは決まりません。
だからこそ、家財を残して売るなら、何を残し、片付けを誰がするかを、契約で決めておくことが大切です。決めないままだと、引き渡しのあとで「この荷物はどうするのか」という話になりかねません。
建物を解体するときの決まりも知っておきます。環境省の通知(平成30年)は、建物の解体のときに所有者などが残した廃棄物(残置物)の処理の責任は、建物の所有者などにあるとしています。売買のあと誰が片付けるか、その費用をどちらが持つかは、この通知には書かれていないので、契約で決めることになります。
自分で片付けを頼むときは、業者の許可にも気をつけます。一般家庭から出た残置物は一般廃棄物で、産業廃棄物処理業の許可だけでは処理を請け負えません(同じ通知)。福岡市も、いつものごみ出しや市の粗大ごみ受付センターを使わずに、第三者に家庭のごみ(不用品)の回収を頼むなら、市の「一般廃棄物収集運搬業許可業者」に頼むよう呼びかけています。福岡市以外の扱いはお住まいの市町村でご確認ください。許可業者の確かめ方と片付けの順番は、実家じまいの片付けでお伝えしています。
🏠 ② 古い建物を直さずに売れるか
雨漏りや傷みのある建物を、直さずに売ることはできます。よく「現況渡し」と言いますが、実は民法に「現況渡し」という言葉はありません。
民法で「現状」で引き渡すと書いているのは第483条ですが、これは、契約や取引上の社会通念から引き渡すべき時の品質を決められないときの一般的な決まりで、現況渡しを直接定めたものではありません。契約で品質を決めれば、そちらによります。
気をつけたいのは、「そのままで渡すので責任は負いません」と取り決めても、すべての責任がなくなるわけではない点です。民法第572条は、担保の責任(売ったあと、契約と違う不具合が見つかったときの売主の責任)を負わない旨の特約をしても、売主が知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができないとしています。直さずに売るときほど、知っている不具合は書き出して、正直に伝えておくことが、売ったあとの安心につながります。
契約書のどこを読めばよいかは、空き家を売るときの注意点|契約の前に確かめる3つで、建物を残して売るか解体して売るかは、現況渡しと更地渡しの違いでお伝えしています。
📄 ③ 名義を変えずに売れるか
相続した家が、亡くなった親御さんの名義のままになっていることがあります。売るときは、その前に相続登記が要ります。
相続登記の申請は法務省の案内のとおり義務になっていて、期限があります(令和6年4月1日より前に始まった相続で、まだ登記をしていない場合は令和9年3月31日まで)。期限の内に義務を果たす「相続人申告登記」という方法もありますが、法務省は、相続した不動産を売るときは、別途、相続登記の申請が必要としています。期限の数え方や過料の扱いは、実家売却で後悔しないためにの②でまとめています。手続きの代理や書類の作成を頼めるのは、司法書士と弁護士です。
親御さんがご存命で、家が親御さんの名義なら、売主は親御さんです。判断能力が十分でなくなったあとの売却の流れは、認知症の親の実家売却でまとめています。
🗓️ そのまま売るための段取り
この順番で確かめると、話が進めやすくなります
名義を確かめる
家と土地の名義が、今だれになっているかを見ます。亡くなった方の名義のままなら、相続登記の期限も数えておきます。
家財を3つに分ける
持ち出す物、残してもよい物、片付けが要る物に分けます。思い出の品は、先に持ち出しておくと安心です。
建物の気になる所を書き出す
雨漏り、傷み、設備の不具合など、知っていることを紙に書きます。売るときに買主へ伝える材料になります。
渡し方を決める
建物を残して渡すか、解体してから渡すかを、手元に残るお金で比べます。比べ方は、古家付き土地の買取|仲介手数料と手取りが参考になります。
契約書で取り決める
家財を残すなら何を残すか、片付けを誰がするか、不具合をどう伝えたかを、契約書と説明の書面で確かめます。
👣 お一人でもできること
遠くに住んでいてもできること
全部を一度に済ませなくて大丈夫です。できるところから一つずつ進めてください。
❓ よくあるご質問
Q. 家財を残したままでも、買い取ってもらえますか
家財の扱いは、買主との取り決めしだいで、一概には言えません。残したい場合は、何を残すか、片付けを誰がするかを、契約の前に確かめます。買取と仲介の違いは、空き家の買取と仲介の違いをご覧ください。
Q. 名義が親のままでも、先に買主を探してよいですか
買主を探す相談を始めることはできますが、売るには相続登記が要ります。期限もあるので、名義の確認は早めに始めておくと、あとで慌てずに済みます。
📝 この記事のまとめ
- 空き家は建物を残したまま売ることもできますが、「そのまま」には家財・古い建物・名義の3つの意味があります
- 家財は、売れば当然に買主のものになるとは言えません。残す物と片付けの分担を契約で決めます
- 直さずに売ることはできますが、「責任を負わない」と決めても、知りながら告げなかった事実の責任は免れません
- 相続した家を売るときは、その前に相続登記が要ります。申請には期限があります
長く家族を守ってきた家を、次のオーナー様へ引き継ぐなら、家財も建物も名義も、気持ちよく送り出せる形に整えたいものです。まずは名義の確認と、持ち出したい物のメモから始めてみてください。どこから手をつければよいか分からないときは、いまの状況を伺うところから、一緒に考えます。
本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、2026年9月時点の法令(民法・不動産登記法)と、環境省・法務省・福岡市・法務局の資料に基づく一般的な説明です。個別の契約内容は、契約前に不動産会社からの説明でご確認ください。登記は司法書士・弁護士に、片付けの許可はお住まいの市町村にご確認ください。最終更新日:2026-10-02。
売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。