こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。

空き家を売ると決めたとき、まず気になるのは、いくらで売れるか、買い手が見つかるか、だと思います。けれど、売ったあとに困りごとが起きるかどうかは、価格よりも契約の前に何を確かめたかで変わることがあります。

結論から申し上げます。建物を残したまま空き家を売るとき、契約の前に確かめたいのは次の3つです。

  • 家について知っていることを、告知書に書いて伝えること
  • 売ったあとに、契約の内容に合わないこと(雨漏りなど)が見つかったときの扱い
  • 手付で契約を解除できるのは、いつまでか

相続した空き家なら、税の特例の期限もあわせて確かめます。一つずつ見ていきます。なお、建物を解体して更地で引き渡す場合や、地面の下のものの話は、古家付き土地の売却で起きやすいトラブルでお伝えしています。

📋 契約の前に確かめる3つと、その理由

確かめること理由お手元でできること
告知書に何を書くか責任を負わない特約をしても、知りながら告げなかった事実については、売主は責任を免れません(民法第572条)ご家族に聞いて、家について知っていることを書き出す
契約の内容に合わないときの扱い買主は、直すことなどを求められます。種類・品質のことは、買主が知った時から1年以内に売主へ知らせるのが原則です(売主が知っていた場合などは別。民法第562条・第566条)契約書の案で、その条項と、知らせる期間の定めに印をつける
手付で解除できる期限相手が契約の履行に着手した後は、手付による解除はできません(民法第557条)手付の額と、手付で解除できる期限を日付で確かめる
民法(e-Gov 法令検索)・不動産適正取引推進機構・国民生活センターの資料による。2026年9月時点

① 家について知っていることを、告知書に書いて伝える

家を売るとき、売主は、雨漏りやシロアリの被害、設備の具合など、家の状態を書いた書類(告知書。「物件状況等報告書」とも呼ばれます)を買主に渡すことがあります。

空き家の場合、売る方がその家に住んでいなかったことも多いと思います。親御さんが一人で暮らしていた家を相続した、というような場合です。知らないことがあって当然です。そのうえで、知っていることは、小さなことでも書いて伝えておくことが、いちばんの備えになります。

理由は民法にあります。売主は、責任を負わない旨の特約をしたときでも、「知りながら告げなかった事実」については、その責任を免れることができない、と定められています(民法第572条)。

では、知らなかったことはどうなるのでしょうか。告知書の書き方が争われた裁判例を紹介した記事の中で、不動産適正取引推進機構(RETIO)の解説は、告知書は売主が知っていることを買主に伝えるためのもので、売主が知らないことまで保証するものではなく、実際にあった場合の分担は、売買契約の担保責任の決まりで行われる、と述べています(東京地裁令和4年11月22日判決の紹介記事。2020年4月の民法改正より前の契約の、地裁の1件です)。知らなかったことでも、契約の内容に合わないことが見つかれば、次の②の扱いになります。

ただし、「分からないことは書かなければよい」という意味ではありません。この判決は、外から見て疑うべき様子があったとは認められないことも、理由にしています。ご家族や、親御さんと親しかった方に聞いて分かることは書き、分からないことは「分からない」と伝えておきます。

② 売ったあとに、契約の内容に合わないことが見つかったとき

民法では、引き渡した家や土地が、種類・品質・数量の点で契約の内容に合わないとき、買主は売主に、直すこと(修補)などを求められます(民法第562条。買主のせいで生じたことなら求められません)。契約書では「契約不適合」という言葉で書かれていることがあります。

種類や品質のことについては、期間の決まりもあります。買主が合わないことを知った時から1年以内に売主へ知らせないと、買主は、直すことや代金の減額、損害賠償、契約の解除を求められなくなります。ただし、売主が引き渡しの時にそのことを知っていた、または重大な過失で知らなかった場合は別です(民法第566条)。1年以内に必要なのは、買主から売主への「知らせ(通知)」です。

この扱いは、契約で民法とは別に決めることがあります。先ほどの裁判例でも、契約には、引き渡しから3か月以内に求められたものに限って売主が直す、という趣旨の特約があったと紹介されています(その特約がどう扱われたかは、紹介記事には書かれていません)。ただし、特約で決められる範囲に限りがあるのは、①でお伝えした民法第572条のとおりです。

国民生活センターは、高齢の方の自宅の売却の相談をまとめた資料で、自宅を売った後に、雨漏りやシロアリの被害などを理由に、不動産業者から修理費用を請求されるケースがみられると紹介しています。そのうえで、売主がどんな責任を負うかは契約条項で定めてあることが多いので、契約のときにその条項を確かめる必要がある、としています(国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」・令和3年6月24日。60歳以上の方の相談のまとめです)。

何について・いつまで・どう対応するのかを、署名の前に契約書の案で読んでおくことが、売ったあとの安心につながります。

③ 手付で契約を解除できるのは、いつまでか

売買の契約のときには、買主から売主へ手付(契約のしるしに渡すお金)が支払われることがあります。

民法では、手付が払われた売買で、相手が契約の履行に着手する(約束を果たすことに取りかかる)までは、買主は手付を手放すことで、売主は手付の倍の額を実際に差し出すことで、契約を解除できます(民法第557条)。売主の側から見ると、契約のあとで「やはり売るのをやめたい」と思ったとき、受け取った手付を返すだけでは解除できない、ということです。

不動産適正取引推進機構の「不動産のQ&A」は、自分の家を売る売主の例で、売主が自分の都合で解除するなら「手付倍返し」による解除になり、買主がすでに「履行の着手」をしていれば、契約条項にしたがって「契約違反」による「違約金」を払って解除することになる、と説明しています。また、一定の期日を過ぎると手付で解除できないとする特約(手付解除の期日)を設けることもできる、としています。

何が「履行の着手」に当たるかは、事情によって判断されるもので、一言では言えません。だからこそ、手付の額と、手付で解除できる期限を、契約書の案で日付として確かめておくことが大切です。違約金の額など、契約をやめるときのお金の話は、古家付き土地の売却で起きやすいトラブルでも取り上げています。

📅 相続した空き家なら、特例の期限も確かめる

相続した空き家を売るときは、税の特例を使えるかどうかで、手元に残るお金が変わることがあります。国税庁の案内(No.3306)によると、一定の要件を満たせば、売った家や土地の譲渡所得の金額(税の計算のもとになる、売ったことによる所得の金額)から最高3,000万円まで控除できます(相続人の数が3人以上の場合は2,000万円まで)。

この特例には、期限が2つあります。

  • 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売ること
  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること(例:令和6年に相続が始まったなら、令和9年12月31日まで)

相続の時期によっては、令和9年12月31日より、2つ目の期限のほうが先に来ます。ほかにも、家が昭和56年5月31日以前に建てられたものであることや、市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」を添えることなど、要件がいくつもあります。

建物を残したまま売る場合は、家を残したままでは使えない点に注意が必要です。国税庁の案内では、家の「全部の取壊し等」(解体など)をした後に土地を売るか、令和6年1月1日以後の譲渡なら、売った年の翌年2月15日までに家の「全部の取壊し等」が行われることなどが要件とされています(誰が行うかは、案内には書かれていません)。

使えるかどうかの判断は、税理士か所轄の税務署にご相談ください。ここでは、期限があることを、売り方を決める前に知っておいていただければ十分です。

🗓️ 契約までの段取り

契約の前に、この順番で確かめます

家について知っていることを書き出す

雨漏り、シロアリ、設備の具合、増築や修繕のことなど、ご家族や、親御さんと親しかった方に聞いて分かることを書き出します。分からないことは「分からない」と書いておきます。

相続した空き家なら、期限を日付で確かめる

相続が始まった日から、特例の期限を数えておきます。使えるかどうかは税理士か所轄の税務署に相談します。

告知書に書いて、買主に伝える

書き出したことを告知書に書きます。書いたかどうか迷うことは、仲介する不動産会社に相談します。

契約書の案を、署名の日より前に受け取る

案を早めに見せてもらい、次の所に印をつけます:契約の内容に合わないときの扱いと知らせる期間/責任を負わない特約の範囲/手付の額と手付で解除できる期限。

分からない所は、署名の前に質問する

印をつけた所で分からない言葉が出てきたら、それがそのまま署名の前に聞く質問になります。

👣 お一人でもできること

今日からできる確認

家について知っていることを、ご家族に聞きながら紙に書き出す
相続した空き家なら、相続が始まった日と、特例の期限(その3年後の年の12月31日と、令和9年12月31日)を書いておく
契約書の案をもらったら、契約の内容に合わないときの条項と、知らせる期間の定めに印をつける
手付の額と、手付で解除できる期限を日付で書き写す
「責任を負わない」と書かれた特約があれば、何についての特約かを確かめる

契約書の読み方は、署名の前に、仲介する不動産会社に遠慮なく聞いてください。

❓ よくあるご質問

Q. 引き渡しの後、買主から「雨漏りが見つかった」と連絡がありました

その場で修理やお金の支払いを約束せず、まず契約書の、契約の内容に合わないときの条項と、知らせる期間の定めを確かめます。告知書に雨漏りのことをどう書いたかも見直します。そのうえで、仲介した不動産会社に相談してください。法律の判断が必要なときは、弁護士などの専門家へご相談ください。

Q. 「現状のまま引き渡し、売主は責任を負わない」と書けば安心ですか

特約で決められる範囲はありますが、限りもあります。①でお伝えした民法第572条のとおり、知っていて伝えなかったことは、特約があっても責任が残ります。安心のためには、知っていることを伝えたうえで、何についての責任を、どうするのかを具体的に書くことです。

Q. 業者に買い取ってもらう場合も、同じことを確かめますか

告知書と契約書の条項を確かめることは、仲介で個人の方に売る場合も、業者に買い取ってもらう場合も変わりません。二つの売り方の違いは、空き家の買取と仲介の違いでお伝えしています。

Q. 契約書の中身を、仲介の会社以外にも相談したいです

公的な相談窓口や団体の窓口があります。福岡県・佐賀県の相談先は、空き家・実家の相談先の記事でまとめています。

📝 この記事のまとめ

  • 建物を残したまま空き家を売るとき、契約の前に確かめたいのは、告知書・契約の内容に合わないときの扱い・手付で解除できる期限の3つです
  • 責任を負わない特約をしても、知りながら告げなかった事実については責任を免れません。知っていることは小さなことでも告知書に書きます
  • 種類・品質のことは、買主が知った時から1年以内に売主へ知らせるのが原則です(売主が知っていた場合などは別)。契約で別に決めていることもあるので、条項を読みます
  • 手付による解除は、相手が契約の履行に着手するまでです。手付の額と期限を日付で確かめます
  • 相続した空き家の特例には期限があり、家の「全部の取壊し等」などの要件もあります。使えるかどうかは税理士か所轄の税務署に相談します

長くご家族を守ってきた家を、次のオーナー様へ引き渡す契約です。売ったあとも気持ちよく過ごせるように、分からないところは、署名の前に一つずつ確かめておきたいところです。私たちも、いまの状況を伺うところから、一緒に考えます。

本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、2026年9月時点の法令(民法)と、国税庁・不動産適正取引推進機構・国民生活センターの資料に基づく一般的な説明です。税の特例は税理士・所轄の税務署に、契約の内容は仲介する不動産会社や弁護士にご確認ください。最終更新日:2026-09-29。

売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。

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