こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
「空き家を3年放置すると、罰金100万円になるらしい」。そんな話を耳にして、親の家のことが急に心配になった方もいらっしゃるかもしれません。ご実家が空き家になっていて、しばらく手をつけられていないと、こうした話はどうしても気になるものです。
結論から申し上げます。空家法では、空き家を持っていること、住んでいないことそのものに罰則はありません。空き家の法律(空家法)で過料(かりょう)の対象になるのは、主に、市町村長から「特定空家等」として命令を受け、それに従わなかった場合で、金額は50万円以下です。
また、条文の言葉は「罰金」ではなく「過料」です。名前も、定めている条文も別のものです。空家法の罰則の条文(第30条)には、「3年」や「100万円」という決まりは書かれていません。
ただし、空き家まわりで「10万円以下の過料」が出てくる手続きは、ほかに2つあります。相続登記と、建物を解体したあとの建物滅失登記です。そして、過料とは別に、勧告を受けると土地の固定資産税の軽減が外れます。この記事では、この4つを取り違えないように整理します。空き家が放置されたときに市町村の対応がどう進むかは、空き家を放置するとどうなる?でお伝えしています。
📋 よく聞く話と、条文に書かれていること
| よく聞く話 | 条文・公的な資料に書かれていること |
|---|---|
| 空き家を放置すると罰則がある | 所有者等は「適切な管理に努める」よう求められています(空家法第5条)。これは努力を求める書き方で、この条文に罰則はありません |
| 罰金を取られる | 空家法の条文は「罰金」ではなく「過料」です(第30条) |
| 3年放置で100万円 | 空家法第30条の金額は「50万円以下」(命令違反)と「20万円以下」(報告や立入調査の拒否など)です。なお、相続登記の期限には「3年以内」という数字があります(不動産登記法) |
| 放置すると固定資産税が6倍 | 勧告を受けると、土地の固定資産税の「住宅用地特例」(課税標準を1/6・1/3にする軽減)が外れます。今回確認した国土交通省の資料には「6倍になる」とは書かれていません |
こうして並べると、似た数字や言葉が、空家法・固定資産税・登記という別々の仕組みにあることが分かります。順に見ていきます。
⚖️ 空家法の過料は、命令に従わなかったときの50万円以下
空家法は、空き家の状態によって、市町村長ができることを2段階に分けています。
| 区分 | どんな空き家か | 市町村長ができること | 過料 |
|---|---|---|---|
| 管理不全空家等 | 適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家 | 指導 → 勧告(第13条) | ありません |
| 特定空家等 | 倒壊など著しく保安上危険になるおそれがある、著しく衛生上有害になるおそれがある、などの空き家 | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行(市町村が所有者に代わって措置を行うこと)(第22条) | 命令に違反した場合、50万円以下(第30条第1項) |
過料の対象は、特定空家等への命令(第22条第3項)に違反した場合です(第30条第1項)。管理不全空家等への指導や勧告に従わなかっただけでは、過料の対象になりません。第30条に第13条は出てこないためです。
命令も、いきなり出るものではありません。国土交通省のガイドラインは、助言・指導、勧告、命令、代執行の手続きを「順を経て行う必要がある」としています(ただし、災害などの緊急時には、助言・指導と勧告を経ていれば、命令を経ずに代執行できる例外があります。第22条第11項)。命令の前には、どんな措置を求めるのかを書いた通知書が届き、意見書や自分に有利な証拠を出す機会が与えられます(第22条第4項)。
もう一つの過料は、市町村の立入調査を拒んだり、求められた報告をしなかったり、うその報告をしたりした場合の20万円以下です(第30条第2項)。
金額はどちらも「以下」で、上限を決めたものです。「50万円を取られる」という決まりではありません。過料の徴収の手続きは、非訟事件手続法という法律に定めがある、と国土交通省のガイドラインに書かれています。条文はe-Gov 法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」で読めます。
🏠 罰則とは別に、勧告で固定資産税の軽減が外れます
過料よりも先に、お手元の数字に関わってくるのが固定資産税です。
人が住むための家が建っている土地(住宅用地)は、固定資産税の計算のもとになる額(課税標準)が軽減されています。200㎡以下の部分は1/6、200㎡を超える部分は1/3です。国土交通省の空き家対策特設サイトは、「管理不全空家」や「特定空家」への指導に従わず勧告を受けると、この軽減(住宅用地特例)が受けられなくなると説明しています(地方税法第349条の3の2)。
ここで大事なのは、きっかけが「勧告」だということです。指導を受けただけでは、勧告による除外にはなりません。一方で、管理不全空家等は指導・勧告の対象なので、特定空家等より手前の段階でも、勧告を受ければ軽減は外れます。
また、国土交通省の住宅用地特例に関する資料では、勧告を受けていなくても、人が住むための管理を怠っていて今後人が住む見込みがないと認められる場合などは、特例の対象の「住宅」に当たらないとする総務省の通知(平成27年の固定資産税課長通知)も紹介されています。「勧告さえなければ軽減は続く」とは言い切れない、ということです。
「固定資産税が6倍になる」という言い方もよく聞きますが、今回確認した国土交通省の資料に書かれているのは、課税標準の1/6・1/3の軽減が外れるということまでです。実際にいくら変わるかは、土地ごとの計算によります。お手元の納税通知書で見当をつける方法は、空き家の固定資産税の記事でお伝えしています。
📝 「3年」と「10万円」が出てくる、登記の2つの手続き
空き家の法律とは別に、不動産登記法にも過料があります。空き家になったご実家に関わりやすいのは、次の2つです。義務を負う人は、手続きごとに違います。
| 手続き | 期限 | 過料 | 誰の義務か |
|---|---|---|---|
| 相続登記(名義を相続人に移す登記) | 相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内 | 正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象(第164条第1項) | 相続で所有権を取得した人(第76条の2) |
| 建物滅失登記(建物がなくなったことを登記する手続き) | 建物がなくなった日から1か月以内 | 正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象(第164条第1項) | 建物の登記に所有者・名義人として記録されている人(第57条) |
相続登記は、令和6年4月1日から義務になりました。それより前に始まった相続でも、まだ相続登記をしていなければ義務の対象で、令和9年3月31日までに登記をする必要があります(相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降なら、その日から3年以内)。法務省「相続登記の申請義務化について」に説明があります。
過料も、期限を過ぎたら自動で科されるわけではありません。法務省の説明では、登記官が義務の違反を把握すると、まず期間を決めて登記をするよう催告し、それでも正当な理由なく登記をしなかった場合に、裁判所へ通知する流れです。相続人が極めて多い場合や、重い病気の場合などは「正当な理由」の例として挙げられています。
建物滅失登記は、ご実家を解体したあとに出てくる手続きです。義務があるのは、建物の登記に記録されている人です。解体業者だから、その建物に住んでいるから、という理由で義務者になるわけではありません。登記の名義が亡くなった親のままのときの扱いは、現況渡しと更地渡しの違いのよくあるご質問でお伝えしています。
📅 期限から逆算すると
ご実家が空き家になっているとき、日付で確かめること
相続登記の期限を確かめる
相続がいつ始まったかで期限が変わります。令和6年4月1日より前に始まった相続でまだ登記をしていなければ、令和9年3月31日までです(相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降なら、その日から3年以内)。令和6年4月1日以降に始まった相続なら、相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内です。
市町村から届いた文書の言葉を確かめる
文書が届いていたら、「指導」「勧告」「命令」のどれが書かれているかを見ます。勧告なら固定資産税の軽減が外れるきっかけになり、命令なら従わない場合に過料の対象になります。書かれている担当課に、何を、いつまでに求められているのかを問い合わせます。
解体するなら、滅失登記まで段取りに入れる
建物がなくなった日から1か月以内です。解体の段取りを組むときに、登記までを一続きにしておくと、期限に追われずに済みます。
👣 相続人が一人でもできること
相続人が何人もいて、遺産分割の話し合いがまとまらない。そのせいで相続登記ができず、期限だけが近づいてくる。そんなときのために、相続人申告登記という仕組みがあります。
法務省の相続人申告登記の説明によると、特定の相続人が一人で申し出ることができ(ほかの相続人の分もまとめて代わりに申し出ることもできます)、登録免許税はかかりません。期限内に申し出た人は、相続登記の申請義務を果たしたものとみなされます(申出より前に遺産分割が済んでいた分は除きます)。
ただし、相続人申告登記は、誰がどれだけの権利を持っているかを示すものではありません。ご実家を売るときは、別に相続登記が必要です。また、遺産分割が成立したあとは、その日から3年以内に、分割の内容に沿った登記をする義務があり、これは相続人申告登記では果たせません。
相続登記の申請の代理や、登記の書類づくりを仕事として引き受けられるのは、司法書士と弁護士です。ご家族の事情に合わせた進め方は、司法書士にご相談ください。
❓ よくあるご質問
Q. 空き家を何年放置すると過料になりますか
空家法には、「何年放置したら過料」という決まりはありません。過料の対象は、特定空家等として命令を受け、それに従わなかった場合です(第30条第1項)。どの段階に何か月かかるかも、条文には書かれていません。
Q. 管理不全空家等の勧告を受けました。過料はありますか
管理不全空家等への指導や勧告に従わなかっただけでは、空家法の過料の対象にはなりません。ただし、勧告を受けると、土地の固定資産税の住宅用地特例が外れます。まずは担当課に、何を求められているのかを問い合わせてください。
Q. 特定空家等になると、家を解体するよう求められますか
状態によります。空家法は、倒壊など著しく保安上危険になるおそれや、著しく衛生上有害になるおそれがない特定空家等(景観などが理由のもの)については、建物の除却(解体して取り除くこと)を助言・指導や勧告の内容から除いています(第22条第1項のかっこ書き)。その場合に求められるのは、修繕や立木竹の伐採などです。
📝 この記事のまとめ
- 空家法では、空き家を持っていること、住んでいないことそのものに罰則はありません(第5条は努力を求める書き方です)
- 空家法の過料は、特定空家等への命令に違反した場合の50万円以下と、報告や立入調査の拒否などの20万円以下です。「罰金」ではなく「過料」で、「3年で100万円」という決まりはありません
- 過料とは別に、勧告を受けると土地の固定資産税の住宅用地特例(1/6・1/3の軽減)が外れます
- 相続登記(相続の開始と取得を知った日から3年以内・令和6年4月1日より前の相続は原則として令和9年3月31日まで)と建物滅失登記(1か月以内)には、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料があります。相続登記は催告が先です
- 遺産分割がまとまらないときは、相続人が一人でもできる相続人申告登記があります。売るときは別に相続登記が要ります
罰則の話から入ると、気持ちが重くなるものです。でも、何が決まっていて、何が決まっていないかが分かれば、次の一手は落ち着いて選べます。長くご家族を支えてきた家のこれからを、いまの状態を見るところから一緒に考えます。
本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、2026年9月時点の法令(空家等対策の推進に関する特別措置法・地方税法・不動産登記法)と、国土交通省・法務省の資料に基づく一般的な説明です。市町村の対応は、空き家の状態と市町村の判断によって異なります。登記の手続きは司法書士・法務局に、固定資産税はお住まいの市町村の税務の窓口にご確認ください。最終更新日:2026-09-26。
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