こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
相続した実家の土地に、古い石積みやブロック積みの擁壁(ようへき=高低差のある土地で、土が崩れないように支える壁)がある。「擁壁のある土地は売れにくい」と聞いて、直してから売るべきか迷っている方もいらっしゃると思います。
先にお伝えします。擁壁のある土地も、売ることはできます。ただし、売る前に擁壁について4つのことを確かめておくと、買う方への説明がしやすくなり、直すかどうかも決めやすくなります。
売れにくいと言われる理由の一つは、買う方が家を建てるときに、擁壁の安全の確認が求められることだと考えられます。その手間が前もって見えないと、買う方は決めにくくなります。この記事では、次のことを順に整理します。
- 擁壁のある土地が「売れにくい」と言われる理由
- 売る前に確かめる4つ(図にしました)
- 検査済証がないときの、福岡市の取り扱い
- 直してから売るか、そのまま売るかの考え方
解体から擁壁・造成、売却までを扱う立場から、順番を間違えないための考え方をお伝えします。
🏠 擁壁のある土地も売れます。売れにくさの元は「建てるときの確認」
擁壁のある土地も、売ることはできます。売れにくいと言われる理由の一つは、買う方が家を建てるときに、擁壁の安全の確認や、場合によっては直しが求められることだと考えられます。
土地を売るだけなら、盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)の許可は関係しません。許可や届け出が関わるのは、盛土・切土や擁壁などの工事をするときです。福岡市のよくある質問でも、規制区域に入った土地について「工事を行わない限り、特に手続きは必要ありません」と答えています。ただし、過去に盛土や切土をした土地の持ち主には、土地を安全な状態に保つよう努める義務があります。
一方で、福岡市は、家を建てるときの建築確認の審査で、敷地の中にある擁壁の構造的な安全性を確認するとしています。さらに、敷地の高低差が3mを超える場合は、いわゆる「がけ条例」により、擁壁から決められた距離をあけて建てるか、安全性を確かめる必要があります。
つまり、擁壁のある土地を買う方は、「この擁壁のまま家を建てられるか」「直す必要があるか」を気にされます。売る前にその材料をそろえておくことが、売れにくさを減らす近道です。
出典:福岡市「盛土規制法に関するよくある質問」(「盛土規制法について」のページに載っている資料)、福岡市「敷地等の安全確認に関する取り扱い~既存擁壁・がけ条例への対応について~」
🧭 売る前に確かめる4つ|区域・高さ・つくり・いまの状態
擁壁のある土地を売る前には、①どの規制区域か、②擁壁の高さ、③擁壁のつくり、④いまの状態、の4つを順に確かめましょう。擁壁が安全かどうかの判定は、役所の窓口や専門家が行います。

この4つは、買う方が家を建てるときに確かめられることと、売買のときに説明されることに沿っています。順に見ていきます。
売る前に確かめる4つ(福岡市の場合)
区域:福岡市は市全域が規制区域です
福岡市は、令和7年5月26日から、市全域を盛土規制法の規制区域(宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域の2種類)にしています。どちらに入るかは場所で違い、工事をするときの手続きも変わります。「福岡市Webまっぷ」で見られます。規制区域の中で売買するときは、重要事項説明(契約の前に、不動産会社が買う方へ土地の決まりなどを説明すること)で、この法律に基づく制限の内容が説明されます。
高さ:2mを超えるか、がけが3mを超えるか
高さが2mを超える擁壁は、建築基準法の「工作物」(建物以外で、建築の決まりがかかるもの)として、確認と検査の決まりがかかります(盛土規制法などの許可で造る擁壁は除きます)。検査に合格すると「検査済証」が出ますので、手元の書類を探してみましょう。また、がけの高さが3mを超えると、福岡市の「がけ条例」の対象になります。
つくり:どんな形式の擁壁か
福岡市の資料は、鉄筋コンクリート造や練積み造などを一般的な擁壁(Aグループ)、空石積み(コンクリートで固めず石を積んだだけのもの)、石を積み上げただけで裏側がコンクリートで一体になっていないもの、二段の擁壁、増し積みの擁壁(もとの擁壁の上にブロックなどを積み足したもの)などを機能上問題のある擁壁(Bグループ)と分けています。ただ、裏側は外から見えないため、見た目だけで決めることはできません。
いまの状態:水抜き・ひび割れ・ふくらみ
国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート(案)」は、水抜き穴や水のしみ出し、ひび割れ、ふくらみ、傾きなどを順に見て、擁壁の危険度を概略で知るためのものです。高さ1m以下の擁壁は対象外で、シートで安全と出ても日常の点検は続けるように、と書かれています。
福岡市「盛土規制法について」「盛土規制法に関するよくある質問」「敷地等の安全確認に関する取り扱い」、建築基準法施行令 第138条、国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」をもとに当社作成
国のチェックシートは、空石積み・増し積み・二段・張り出し床版のついた擁壁を「本来、宅地の擁壁として適さないもの」とし、いま変化がなくても専門家に相談するよう勧めています。こうした形式に心当たりがあれば、売る前に一度見てもらうと安心です。ひび割れやふくらみなどの変化も見えるときは、早めに専門家や市の窓口へご相談ください。
4つを確かめた結果は、メモにしておくと、売却の相談や買う方への説明に役立ちます。区域のことは福岡市の開発・盛土指導課(092-707-3902)、建てるときの擁壁の扱いは建築審査課(092-711-4577)が窓口です。
出典:福岡市「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)について」、建築基準法施行令 第138条、国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」
📄 検査済証がなくても、福岡市には確かめ方があります
擁壁の検査済証が見つからなくても、それだけで違法とは限りません。福岡市では、家を建てる(建築確認の)ときに、検査済証がない擁壁の状態を外観のチェックシートで見分ける取り扱いがあります。
検査済証は、擁壁の断面や裏込め、水はけなど、外から見えない部分が、造ったときに適切に設計・施工されたと判断するものです。検査済証がない理由は、高さが2m以下だった、別の許可で造った、書類をなくした、などさまざまで、書類がないことだけでは判断できません。
福岡市は、検査済証がない擁壁について、平成22年4月から弾力的な運用をしています。家を建てるときに「外観状況チェックシート・外観状況報告書」で、「すぐに改善を要する擁壁」か、当面は維持管理しながら使える擁壁かを見分けます。改善が要る場合は、建築工事と合わせて改善することを条件に、確認申請を受け付けるとしています。
また、自分の土地の擁壁としてこの取り扱いを使うときは、定期的に外観を点検すること、擁壁に今以上の重さをかけないこと、土地を譲るときはこの2つを引き継ぐことを確約します。この取り扱いは平成22年4月からのものですので、それ以降に家を建てたときにこの確約をしていれば、土地を譲るときに引き継ぐ約束になっています。建築確認の書類があれば探し、相続した土地での扱いは建築審査課でお尋ねください。
なお、コンクリートブロック積みの土留めで高さが1mを超えるものは、この取り扱いの対象外です。取り扱いが使えるかどうかも含めて、建築審査課で確かめられます。
出典:福岡市「敷地等の安全確認に関する取り扱い」、同 配布資料
🔀 直してから売るか、そのまま売るかの考え方
直してから売るか、そのまま売るかは、土地ごとに違います。4つを確かめた結果と、買う方が建てるときに求められそうなことを並べてから決めましょう。
そのまま売る場合は、4つを確かめたメモと、検査済証や建築確認の書類を、買う方への説明に使います。買う方は、建てるときに何を求められそうかを前もって考えられます。直してから売る場合は、工事の手続き(下の届け出など)と、古家の解体との順番を先に確かめます。
擁壁を直す工事には、別の手続きがかかることがあります。福岡市のよくある質問では、位置や高さが変わらない擁壁のやり替えは盛土規制法の許可の対象にならない、と答えています。一方で、高さ2mを超える擁壁の一部か全部を取り除くときは、着工の14日前までに市への届け出が要ります。
擁壁ごと取り除く解体工事も、注意が要ります。市は、高さ2mを超える擁壁を取り除く場合について、解体工事そのものは許可の対象ではないものの、工事のあとに残る崖は「既存の切土」に当たることがあり、崩れて災害が起きるおそれがあれば、勧告や改善命令の対象になるとしています。擁壁を取り除く解体や、擁壁のそばの整地を考えるときは、先に擁壁の扱いを窓口で確かめておくと安心です。
当社は擁壁・造成の工事も行っています。福岡市西区生の松原の現場では、もともとあった擁壁を活かしながら、新しい鉄筋コンクリートの擁壁を築きました。

解体から擁壁・造成までの流れは生の松原の施工事例に、擁壁の工事の様子は擁壁・造成工事の現場レポートにまとめています。建て替えの条件が気になる土地は、再建築不可物件の売却|解体する前に確かめることもあわせてご覧ください。
出典:福岡市「盛土規制法に関するよくある質問」(「盛土規制法について」のページに載っている資料)
直す前に、そのまま売る場合と直してから売る場合の見通しを並べて比べると、迷いが少なくなります。売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。
❓ よくあるご質問
Q. 古い擁壁があるだけで、市から直すように命じられますか
いいえ、古い擁壁があるだけで命令を受けるとは言えません。規制区域の土地の持ち主には、土地を安全に保つよう努める義務があり、市は必要と認めたときに勧告ができます。命令は、擁壁が極めて不完全で災害のおそれが大きいなど、重い条件のときのものです。
出典:福岡市「盛土規制法に関するよくある質問」(「盛土規制法について」のページに載っている資料)
Q. 売るまでの間、持ち主として気をつけることはありますか
はい。福岡市の所有者向けのチラシは、擁壁の高さ以上に土を盛らない、擁壁の上に新しい構造物を原則として造らない、雨水を擁壁の反対側へ流す、水抜き穴やひび割れを定期的に見る(とくに大雨や地震の後)、などを挙げています。空き家のままの土地でも、ときどき様子を見ておきましょう。
Q. 福岡市以外の土地のときは、どこで確かめますか
この記事の窓口と取り扱いは、福岡市のものです。規制区域や、がけの決まり、擁壁の扱いは、市町村によって窓口や運用が違います。土地のある市町の役所でお尋ねください。
📌 この記事のまとめ
- 擁壁のある土地も売れます。売れにくいと言われる理由の一つは、買う方が建てるときの擁壁の確認が読みにくいことです
- 売る前に、区域・高さ・つくり・いまの状態の4つを順に確かめましょう。判定は窓口・専門家が行います
- 検査済証がなくても違法とは限りません。福岡市には外観のチェックシートで見分ける取り扱いがあります
- 擁壁を取り除く解体や、擁壁のそばの整地の前には、擁壁の扱いを確かめましょう
- 直すかどうかは、そのまま売る場合と直してから売る場合を並べて比べてから決めると迷いません
擁壁は、長いあいだ家と暮らしを足元から支えてきた、土地の大切な一部です。その役割をきちんと確かめてから、次のオーナー様へ引き継げるように、分からないことがあればお気軽にご相談ください。
本記事は2026年度の制度に基づく解説です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は、宅地造成及び特定盛土等規制法、建築基準法・同施行令、福岡市建築基準法施行条例、福岡市の「盛土規制法について」「盛土規制法に関するよくある質問」「敷地等の安全確認に関する取り扱い」「注意喚起チラシ(自己所有者用)」、国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」(2026年10月30日に確認)に基づく一般的な説明です。擁壁が安全か、直す必要があるか、家を建てられるかは、個々の土地ごとに役所の窓口や専門家の判断によります。ご自分の土地については、福岡市の開発・盛土指導課・建築審査課(ほかの市町は、その役所の窓口)にご確認ください。最終更新日:2026-11-05。
売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。