こんにちは。株式会社サンミライ開発、不動産事業部の藤木です。
売ると決めたはずなのに、実家のことを考えると気持ちが沈む。家族には言いにくいけれど、なかなか踏み出せない。ご相談の場で、こうしたお気持ちに触れることがあります。
結論から申し上げます。実家を手放すことがつらいと感じるのは、自然なことです。気持ちが整うまで、決断を急ぐ必要はありません。
ただし、相続した空き家を売ったときの税の特例のように、期限が決まっているものだけは、先に確かめておくと安心です。この記事では、つらさの中身を分けて考える方法と、待ってよいこと・待たないほうがよいことを、実際のご相談でうかがった言葉とあわせてお伝えします。
📊 話し合いの必要を感じながら、まだの方が35.0%
全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が2026年9月23日に公表した『2026 住宅居住白書』に、空き家についての調査があります。ご自身またはご家族(ご両親等)の家が、すでに空き家になっている、または将来空き家になる可能性があると答えた方は37.2%でした。
その方たち(1,859人)に、いまどのような検討をしているかを複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「話し合いの必要を感じつつもまだ行っていない」の35.0%でした。次いで「放置・何も考えていない」が20.7%です。
調査の概要:全国の20〜65歳の男女5,000名/インターネット調査/2026年7月30日〜8月5日(全国宅地建物取引業協会連合会『2026 住宅居住白書』)。出典:公式PDF(冒頭のまとめ・誌面 p.21)
この調査は、なぜ話し合えていないのか、その理由までは尋ねていません。ここから先は、私たちがご相談の場で見てきたこと、うかがったことです。
🗣️ ご相談の場でうかがった言葉
ここでは、ご自宅を手放すことを考えている親御さんの世代の言葉をご紹介します。実家を売ることを考えているお子さんにとっても、親御さんの気持ちを知る手がかりになると思います。ご本人の了承をいただき、お名前や場所が分からない形にしています。
ご自宅の住み替えを考えていた70代の方は、ご自宅にうかがったとき、住み替えを前向きに考えながらも、こうおっしゃいました。
「もちろんこの家にも未練があるけどね。」
(福岡県内にお住まいの70代の方/2026年7月、ご自宅での面談で)
地方から出てこられ、ご夫婦で働いて家を建てられた80代の方は、こう話されました。
「本当に働きましたもんね。本当。家払わないといけん思ってね。」
(福岡県内にお住まいの80代の方/2026年8月、ご自宅での面談で)
この方は、娘さんの一言で、娘さんの住まいの近くへ移ることを決めたそうです。
「ああ、もうね、こんなつもりやなかったけど、娘がね、お母さんもね、あっちで来たら来たら言うから、決心がつきました。はい。なんのあれもない。もう、もうスッキリしました。」
(同じ方/同じ日の面談で)
それでも、地方から出てきて家を建てたころの話になると、こうもおっしゃいました。
「なかなかやっぱ思い切られんしないもんね。」
(同じ方/同じ日の面談で)
決心がついたあとでも、思い切れない気持ちは残る。同じ方の中に、どちらもありました。つらさは、口に出してよいものです。言葉にできたところから次の一歩が見えてくることが多いと、私は感じています。
💭 つらさの中身を、分けてみます
「つらい」とひとことで言っても、中身は人によって違います。ご相談を受けていると、おおむね次のように分けられると感じます。分けてみると、それぞれに手の打ち方があります。
| つらさの中身 | よくあるお気持ち | 軽くするためにできること |
|---|---|---|
| 家そのものへの思い | 気に入って買った。苦労して建てた。家族で暮らした | 写真や間取りを残す。家族で集まる日をつくる |
| 物への思い | 家具や道具、仏壇をどうするか決められない | 一度に決めない。「残す」「譲る」「お別れする」に少しずつ分ける |
| 家族への申し訳なさ | 親が大事にしてきた家を手放してよいのか | その家が家族のために果たしてきた役目を、家族で言葉にしてみる |
| 決めることの重さ | 何から考えればよいか分からない。見通しが立たない | 決める前に、売った場合・残した場合の見立てだけを知る |
先ほどの70代の方は、家には「未練がある」と話す一方で、家具や荷物については「私はそんな、もう思い出なんてそんなのはあんまりあんまりない。」(同じ方/2026年7月、ご自宅での面談で)とも話されていました。家への思いと物への思いは、同じ方の中でも別のことがあります。どこがつらいのかが分かると、全部を一度に決めなくてよくなります。
決めることの重さは、見立てで軽くなることがあります
4つ目の「決めることの重さ」は、情報が足りないことから来ている場合も多いものです。いくらで売れそうか、解体するならいくらかかりそうか、手元にどれくらい残りそうか。この見当がつかないうちは、考えが同じところを回り続けます。
ご相談を受けていると、何か月もモヤモヤとした気持ちを抱えたままの方に出会います。そして、売却先が決まり、工事が始まるころに、ほっとした表情を見せてくださる方が多いとも感じています。見通しが立つと、気持ちが少しずつ追いついてくるのだと思います。
🏠 家には、果たしてきた役目があります
私たちは解体と不動産の両方の仕事をしています。その中で大切にしているのは、家には役目があるという考え方です。家は、雨や風から家族を守り、子どもを育て、そこで暮らす人を支えてきました。
家族の形が変われば、家に求められる役目も変わります。あるご相談の場で、私はこうお話ししました。
「やっぱだんだんこう家族の人数がやっぱ変わるじゃないですか。…増えていく時は増えていくけど、減る時はシュッて減っていくから。」
(不動産事業部・藤木/2026年7月のご相談で)
家を手放すことは、家の役目を終わらせることではないと、私は考えています。売却であれば、その家の役目は次のオーナー様へ引き継がれます。更地にしてから売る場合でも、その土地に次の家が建ち、新しい家族の暮らしが始まることも多くあります。お別れは、未来への準備でもあります。
先ほどの80代の方のお宅では、ご主人が長年使ってきた仕事道具を、いまは息子さんが使っているとうかがいました。物にも家にも、次へ受け継がれていく役目があると、私たちは考えています。
⏳ 待ってよいこと、待たないほうがよいこと
気持ちの整理を待つあいだに、急がなくてよいことと、期限があるので先に確かめたいことを分けておきます。
| 項目 | 急ぐ必要 | 理由 |
|---|---|---|
| 売るかどうか、いつ売るかの決断 | 急がなくて大丈夫です | 期限のあるものを確かめたうえで、ご家族の気持ちがそろうのを待てます |
| 家財や思い出の品の仕分け | 売る日が決まるまでは、急がなくて大丈夫です | 少しずつ進められます |
| 相続した空き家を売ったときの税の特例 | 期限があります | 売る時期に条件があります(下で説明します) |
| 親御さん名義の家の話し合い(親御さんがご存命の場合) | 早めが安心です | 判断が難しくなると、売ることも解体することも手続きが重くなります(下の記事でご説明しています) |
| 空き家になっている家の管理 | 先延ばしにしないほうが安心です | 人が住まなくなった家は傷みやすく、状態によっては市町村から助言や指導を受けることがあります |
税の特例について補足します。国税庁の案内によると、相続した空き家(被相続人の居住用財産)を売ったときの特例は、譲渡所得から最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)まで控除できるものです。条件の一つに「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」があります。たとえば令和6年に相続が始まった場合は、令和9年12月31日までです(出典:国税庁 No.3306)。
この特例そのものも、令和9年12月31日までに売った場合が対象です。ほかにも、昭和56年5月31日以前に建てられた家であることなど、いくつもの条件があります。使えるかどうかは、税理士か所轄の税務署でご確認ください。当社は税の判断はいたしませんが、売却の日程を組むときに、この期限を一緒に確かめることはできます。
空き家の管理と、軽減が外れる場合については、空き家の固定資産税の記事で詳しくお伝えしています。
つまり、気持ちの整理は待ってよいけれど、カレンダーだけは先に見ておく──この順番をおすすめしています。親御さんがご存命の場合の話し合いの進め方は、親御さんがお元気なうちに話しておく順番でお伝えしています。
👪 急ぎたい人と、迷っている人がいるとき
同じ家族でも、早く決めたい人と、まだ迷っている人がいます。どちらが正しいということはありません。先ほどの70代の方は、お孫さんから言われた言葉を教えてくださいました。
「ばあちゃん、気長に考えて、すぐ結論出さないでねって言われて帰っちゃった。」
(70代の方が話された、お孫さんの言葉/2026年7月、ご自宅での面談で)
「優しいよね」と話されていたのが印象に残っています。早く進めたい方は迷っている方の気持ちを急かさず、迷っている方も期限のあるものだけは一緒に確かめる。そうすると、家族の話し合いはずいぶん進めやすくなると感じています。
📋 お一人でもできること
決断をしなくても、お一人で進められることがあります。
- 家の写真を撮っておく(外観、各部屋、庭、柱の傷など、残しておきたい場所)
- 残したい物を、思いついた順に書き出しておく(全部を決めなくて大丈夫です)
- 相続が始まった日を確かめ、税の特例の期限をカレンダーに書いておく
- 空き家になっている場合は、外から見た状態(屋根、外壁、塀、庭木)をときどき確かめる
- 売った場合と残した場合の見立てを、一度だけ聞いてみる(決めるためではなく、知るために)
最後の一つは、知るためのものです。見立てを聞いたからといって、決めなければならないわけではありません。ある方に見立てをお渡ししたときも、最後にこうお伝えしました。
「今すぐ決めることはもちろん必要ないので」
(不動産事業部・藤木/2026年6月のご相談で)
❓ よくあるご質問
Q. 実家を売ると、親不孝になるのではと感じてしまいます
そう感じる方は少なくありません。一つの考え方として、その家が親御さんにとって何のためにあったのかを、家族で話してみてください。多くの場合、家は家族が安心して暮らすためにありました。いまの家族の暮らしを守るために家を次へ引き継ぐことは、その役目の延長にあると、私は考えています。
Q. 気持ちの整理がつくまで、どれくらい待ってよいですか
決まった答えはありません。目安になるのは、期限のあるものです。相続した空き家の税の特例を使いたい場合は、その期限から逆算して、売り出しから引き渡しまでにかかる期間を見込んでおく必要があります。空き家の場合は、待つあいだの管理も考えておくと安心です。
📝 この記事のまとめ
- 実家を手放すことがつらいのは、自然なことです。気持ちが整うまで、決断を急ぐ必要はありません
- 全宅連の2026年の調査では、空き家になっている・なる可能性がある家がある方(1,859人)の35.0%が「話し合いの必要を感じつつもまだ行っていない」と答えています
- つらさの中身(家、物、家族への思い、決めることの重さ)を分けると、手の打ち方が見えてきます
- 相続した空き家の税の特例には期限があります。カレンダーだけは先に確かめておきましょう
- 家を手放すことは、家の役目を次のオーナー様へ引き継ぐことでもあると、私たちは考えています
「つらい」と感じながらのご相談でも、もちろん構いません。決めるためではなく、知るためのご相談もお受けしています。
本記事の調査の数字は、全国宅地建物取引業協会連合会『2026 住宅居住白書』(2026年9月23日公表)によります。お客様の言葉は、ご本人の了承を得て、お名前や場所が分からない形で掲載しています(録音の文字起こしから一部を抜き出し、言いよどみ・相づちを省いています)。税の特例は2026年9月時点の国税庁の案内に基づく説明です。適用できるかどうかは、税理士または所轄の税務署にご確認ください。最終更新日:2026-09-25。
売却のご相談や査定については、不動産事業のページもあわせてご覧ください。