福岡で空き家やご実家、古いお家の売却を考え始めた方に向けて、福岡都市圏24市区の空き家・築古市場の「今」を数字でお届けする、毎月更新の連載を始めます。第1回の今回は、2026年6月30日から7月17日までの17日間を観測しました。売り出し中の物件がどれだけ増え、どれだけ値下げされ、どれだけ市場から消えたのか。そして売出し価格と実際の成約価格はどれくらい違うのか。当社が独自に集計しているデータで読み解きます。数字が苦手な方は、後半の『このデータをどう使えばいいですか』の章から読んでいただいても大丈夫です。

📖 この記事で分かること
1. 福岡都市圏24市区で、この1か月に何件が新たに売り出され・値下げされ・市場から消えたか
2. 売出し価格と実際の成約価格の差が大きいエリアはどこか(全24市区の一覧つき)
3. 築40年以上の戸建・古家付き土地が、今どれくらい売りに出ているか

🏠 なぜ今、福岡の空き家・築古市場に注目するのか

空き家や古いお家をめぐる制度は、この数年で大きく変わりました。売る・持ち続ける・活用するの判断を先送りしにくくなる方向の変化が続いています。代表的な2つをご紹介します。

空き家を「持ち続けるコスト」が制度で発生(改正空家法)

「空家等対策の推進に関する特別措置法」の改正法(令和5年12月13日施行)で、倒壊などの危険がある「特定空家」の手前の段階として「管理不全空家」という区分が新しくできました。窓や屋根の傷みを放置するなど管理が行き届いていない空き家は、市区町村長の勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(200㎡以下の部分で課税標準が6分の1になる軽減)の対象から外れる場合があります(出典: 国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報)。「とりあえずそのままにしておく」ことに、目に見えるコストが付くようになったのです。

相続した不動産が市場に出やすくなる(相続登記の義務化)

令和6年4月1日からは相続登記が義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の登記が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。過去の相続分も令和9年3月31日までの登記が求められます(出典: 法務省 相続登記の申請義務化について)。さらに令和8年(2026年)4月1日からは、所有者の住所・氏名の変更登記も義務化されました(変更から2年以内・出典:法務省 住所等変更登記の義務化特設ページ)。名義を整理する動きが進むほど、相続した実家や空き家が売却の検討に乗りやすくなります。市場の動きを毎月定点で観測する意味は、ここにあると考えています。

改正空家法と相続登記義務化により、空き家を放置するコストが発生することを表した図
「とりあえずそのまま」にコストが付く時代に(当社作成・2026年7月時点の制度に基づく)

📊 この調査について(毎月更新の定点観測)

私たちサンミライ開発は、解体と不動産売却をワンストップでお手伝いする会社として、福岡都市圏24市区(福岡市7区・久留米市・筑紫野市・春日市・大野城市・太宰府市・那珂川市・糸島市・古賀市・福津市・宗像市・糟屋郡7町)の戸建・土地の売出し情報を毎日集計しています。公開されている情報をもとにした独自調査で、常時売り出し中の約8,300件を毎日追いかけています。なお、解体や売却のご相談自体は福岡県・佐賀県の全域で承っています。このレポートは、市場の動きを毎日追いやすい福岡都市圏に絞って観測しているものです。

今回の観測期間は2026年6月30日〜7月17日の17日間です。集計を始めたばかりの第1回のため期間は短めですが、その分を正直にお伝えしたうえで、毎月続けて精度を上げていきます。なお、途中で集計できなかった日もあるため、件数は「少なくともこれだけ動いた」という控えめの数字とお考えください。また、実際の成約価格については国土交通省 不動産情報ライブラリの2023〜2025年の宅地(土地)取引データを使用しています。個別の物件や取扱会社の情報は扱わず、市区単位の集計のみを掲載します。

📋 この調査の定義(データの前提)
観測期間:2026年6月30日〜7月17日(この間の8回の取得日を突き合わせ)
新着:前回の取得時点になく、今回新たに掲載された物件
値下げ:掲載中に価格が下がった回数(延べ・同一物件の複数回を含む)
市場から消えた(退出):前回あって今回消えた物件(成約・取下げの合算)
集計対象:福岡都市圏24市区の戸建・土地(マンションは含みません)
売出し中央値:宅地の土地・面積50〜660㎡に絞った坪単価の中央値
実成約:国土交通省 不動産情報ライブラリの2023〜2025年・宅地(土地)(2026年7月取得)
欠測日:取得できなかった日があるため、件数は「最低これだけ動いた」下限値です

📈 2026年7月の市場の動き — 新着1,166件・値下げ1,031件・退出923件

まず、17日間で市場がどれだけ動いたかの全体像です。

🆕 新しく売り出された物件
1,166
1日あたり約69件のペースで増えています
📉 値下げされた物件(延べ)
1,031
同じ物件の複数回値下げを含みます
🚪 市場から消えた物件(成約・取下げ)
923
成約か取下げかは公開情報では区別できません
当社日次調査より(2026年6月30日〜7月17日・福岡都市圏24市区・戸建/土地)

売出し中の物件が常時約8,300件あるなかで、17日間に約1,000件規模の「値下げ」と「退場」が同時に起きています。なお、値上げはわずか70件と、値下げの約15分の1にとどまりました。福岡都市圏の築古市場は、静かに見えて思った以上に新陳代謝の速い市場だということが数字から見えてきます。

値下げの中身 — 中央値は約100万円・率にして約3.5%

値下げ1,031件の値下げ幅は、中央値でおよそ100万円、率にして約3.5%でした。中央値とは、値を順に並べたときの真ん中の値のことです。極端に大きい・小さい物件の影響を受けにくいため、本レポートではこちらを使います(参考までに、平均では約163万円・約4.9%でした)。そして値下げの約86%は戸建(古いお家付きの物件)です。建物の状態や解体費の見込みが買い手の判断材料になる分、強気の売出し価格がそのまま通りにくいのが築古市場の現実と言えそうです。

📉 値下げ1,031件の中身をのぞいてみると…
約100万円
値下げ幅の中央値
約3.5%
値下げ率の中央値
約86%
戸建(古いお家付き)の割合

市場から消えた923件 — 「成約または取下げ」

17日間で923件、1日あたり約54件が市場から消えました。ここには「買い手が決まった(成約)」と「売るのをやめた・仕切り直した(取下げ)」の両方が含まれ、公開情報ではこの2つを区別できません。新しく入ってくる数(1,166件)が出ていく数(923件)をやや上回っており、この17日間では売り物の在庫はゆるやかに増えました(差し引き約240件の純増)。一つひとつの物件はよく動いていますが、市場全体の売り物の総量は少しずつ積み上がっている——それが今の福岡都市圏の築古市場の姿です。

💰 売出し価格と実成約価格の差 — 24市区の実測

ここからが今回の調査の中心です。売出し価格はあくまで売主の希望価格であり、実際に取引が成立した成約価格とは別のものです。この2つの差をエリアごとに測ると、「そのエリアの売出し価格が、実勢と比べてどのくらい強気か」の目安が見えてきます。今回は、売出し側を2026年7月17日時点の宅地の土地(家を建てられる土地・面積50〜660㎡)に絞り、国土交通省の実成約データ(2023〜2025年の中央値)と坪単価(1坪=約3.3㎡あたりの価格)で比べました。ただし、比べている時期がずれている点にご注意ください(成約は過去3年、売出しは現在)。地価が上がっている地域では差が実際より大きく出るため、あくまで大まかな傾向をつかむための参考としてご覧ください。まず差が大きかった上位10市区です。

差が大きかったエリア(上位10市区)

💰 売出し中央値と過去成約中央値の差(参考・上位10市区)
※成約は過去3年・売出しは現在の比較です。地価上昇局面では差が大きく出ます。この差は「値引きできる幅」ではありません(本文の注意点参照)
1 糟屋郡須惠町
+68%
売出し 坪28.6万円 / 実成約 坪17.0万円
2 糟屋郡粕屋町
+56%
売出し 坪54.6万円 / 実成約 坪35.0万円
3 春日市
+27%
売出し 坪57.0万円 / 実成約 坪45.0万円
4 福岡市博多区
+23%
売出し 坪129.1万円 / 実成約 坪105.0万円
5 福津市
+22%
売出し 坪23.8万円 / 実成約 坪19.5万円
6 古賀市 +16%
売出し 坪33.7万円 / 実成約 坪29.0万円
7 糟屋郡篠栗町 +14%
売出し 坪32.0万円 / 実成約 坪28.0万円
8 福岡市城南区 +10%
売出し 坪59.4万円 / 実成約 坪54.0万円
9 糸島市 +9%
売出し 坪18.5万円 / 実成約 坪17.0万円
10 福岡市東区 +8%
売出し 坪46.4万円 / 実成約 坪43.0万円
割高率=(売出し中央値−実成約中央値)÷実成約中央値。売出し=2026年7月17日時点の当社調査(宅地の土地・面積50〜660㎡)/実成約=国土交通省 不動産情報ライブラリ(2023〜2025年・宅地(土地)の中央値)。取引データの少ない糟屋郡新宮町・久山町は掲載を見送りました。

上位に糟屋郡のエリアが並びました。特に須惠町(売出し28件・成約44件)と粕屋町(売出し22件・成約51件)は件数が少なめで数字が振れやすい点に注意が必要ですが、「売出し価格が実勢より強気に付いているエリアがある」こと自体は、売る方にも買う方にも知っておく価値のある事実だと考えています。なお、須惠町については解体費用や空き家対策をまとめた解説記事もあわせてご覧ください。

市区売出し中央値(件数)実成約中央値(件数)
糟屋郡須惠町28.6万円(28)17.0万円(44)+68.2%
糟屋郡粕屋町54.6万円(22)35.0万円(51)+56.0%
春日市57.0万円(71)45.0万円(94)+26.7%
福岡市博多区129.1万円(35)105.0万円(160)+23.0%
福津市23.8万円(96)19.5万円(148)+22.1%
古賀市33.7万円(41)29.0万円(67)+16.2%
糟屋郡篠栗町32.0万円(19)28.0万円(41)+14.3%
福岡市城南区59.4万円(58)54.0万円(113)+10.0%
糸島市18.5万円(201)17.0万円(208)+8.8%
福岡市東区46.4万円(175)43.0万円(318)+7.9%
那珂川市33.7万円(45)31.5万円(52)+7.0%
糟屋郡宇美町20.7万円(40)20.0万円(33)+3.5%
福岡市南区52.5万円(161)51.0万円(238)+2.9%
大野城市42.1万円(92)41.0万円(129)+2.7%
糟屋郡新宮町※34.8万円(5)34.0万円(43)+2.4%
福岡市早良区62.8万円(109)63.0万円(233)-0.3%
太宰府市29.4万円(88)30.0万円(135)-2.0%
糟屋郡久山町※15.5万円(4)16.0万円(15)-3.1%
糟屋郡志免町31.4万円(26)32.5万円(38)-3.4%
筑紫野市27.7万円(89)29.0万円(147)-4.5%
福岡市西区43.0万円(97)48.5万円(180)-11.3%
福岡市中央区130.8万円(65)170.0万円(124)-23.1%
久留米市11.9万円(682)16.0万円(449)-25.6%
宗像市12.2万円(138)17.0万円(141)-28.2%
全24市区の売出し中央値と実成約中央値(坪単価・万円/かっこ内は件数)。※印は件数が少なく参考値(糟屋郡新宮町・久山町)。売出し=2026年7月17日時点の当社調査(宅地の土地・面積50〜660㎡)/実成約=国土交通省 不動産情報ライブラリ(2023〜2025年・宅地(土地)の中央値)。差=(売出し−実成約)÷実成約。

この数字の読み方 — 3つの注意点

  1. 時点が違います — 実成約は2023〜2025年の3年分の中央値、売出しは2026年7月時点です。地価が上がっているエリアでは、差が実際より大きく見えることがあります。
  2. 中身が違います — 売り出し中の土地と、実際に取引された土地では、立地や形・広さの構成が同じではありません。中央値どうしの比較は「傾向」を見るための道具です。
  3. 件数が少ないエリアは振れます — 取引や売出しの件数が少ないエリアの数字は参考程度にお考えください。

ですから、この表は「須惠町なら4割引で買える」という意味ではありません。実際の価格は、一つひとつの土地の条件(接道・形・再建築の可否・周辺環境)で決まります。この表が示すのは、あくまでエリアごとの「希望価格と実勢の距離感」の目安です。

差がマイナスのエリアは「割安」とは限りません

逆に、売出し中央値が実成約中央値を下回ったエリアもあります(宗像市−28%・久留米市−26%・福岡市中央区−23%・福岡市西区−11%など)。これは「今売られている土地がお買い得」という意味ではなく、条件の良い土地から先に買われて統計に残り、売出し側には条件の難しい土地が残りやすいという、在庫の質の違いを映している可能性が高い数字です。たとえば久留米市は、今回の比較に使った売出し中の土地だけでも約680件と24市区で最も多く、選択肢が豊富な分、長く残っている物件も多く含まれます。マイナスの数字は「掘り出し物のサイン」ではなく「見極めがより大切なエリアのサイン」と読むのが実態に近いと考えています。

🏠 築40年以上の戸建644件・古家付き土地1,261件 — 在庫の現在地

2026年7月17日時点で売り出し中の8,364件のうち、築40年以上の戸建が644件、古家付きの土地が1,261件。あわせて全体の約23%が「築古・古家」に関わる物件です。エリア別では久留米市が突出しています。

🏠 いま売り出し中の8,364件のうち…
約23% が「築古・古家」関連です
築40年以上の戸建 644件  古家付きの土地 1,261件
(2026年7月17日時点・当社調査)
市区売出し中の物件数うち築40年以上の戸建うち古家付き土地
久留米市1,691件188件268件
福岡市南区727件46件97件
糸島市698件46件60件
福岡市東区686件26件114件
福岡市西区495件16件53件
売出し中の在庫が多い上位5市区(2026年7月17日時点・当社調査・戸建/土地)

築40年以上ということは、1980年代半ば以前に建てられたお家です。ご家族の世代交代や相続と重なる時期に入っており、この層の物件がこれからも市場に出続けることが見込まれます。私たちは、こうしたお家の解体を「壊す作業」ではなく、長年ご家族を支えてきた建物への感謝とともに次の暮らしへ受け渡す準備と捉えてお手伝いしています。また、古いお家の解体は、騒音や振動、粉塵など、どうしても近隣の皆様にご負担をおかけする工事です。だからこそ私たちは、養生・散水・こまめな清掃を徹底し、一件一件丁寧に取り組んでまいりました。

🤔 このデータをどう使えばいいですか(立場別)

空き家・ご実家を売りたい方へ

「いくらで売り出せばよいのか分からない」——売却のご相談で多くいただくお声です。今回の数字が示すのは、強気の売出し価格は値下げで調整されやすい(17日間で延べ1,031件・中央値約100万円)という市場の現実です。最初の価格設定を実勢に寄せるか、時間をかけてじっくり売るか。どちらが正解ということではなく、ご事情に合わせた選び方があります。また、古いお家付きの場合は「古家付きのまま売る」「解体して更地で売る」の2つの道があり、手元に残る金額はケースで変わります。私たちは解体と不動産の両方を自社で手がけているため、両方のパターンを試算して比べるお手伝いができます。相続されたお家なら、まず登記の状況確認(相続登記の義務化への対応)から始めるのがおすすめです。

土地・古家を買いたい方へ

売出し価格と実勢の差のデータは、「価格交渉の余地はエリアによって違う」ことを知る目安になります。なお、この差のデータは土地の集計であり、先ほどの値下げの動き(約86%が戸建)とは対象が異なる点にご注意ください。また、繰り返しになりますが、実際の適正価格は物件ごとの条件次第です。特に築古の戸建や古家付き土地は、再建築の可否・接道・地中埋設物・解体費の見込みなど、価格に効く確認事項が多くあります。データで当たりを付けて、現地と登記で確かめる。この順番でご検討いただくのが安全です。

売主側と買主側それぞれの最大のリスクと推奨する行動をまとめた戦略表
売る方・買う方それぞれの整理(当社作成)

🔗 出典・関連情報

✅ まとめ — 数字は「今の位置」を知る道具です

第1回のレポートをまとめます。福岡都市圏の築古市場は17日間で新着1,166件・値下げ1,031件・退出923件と、想像以上に動いている。売出し価格と実成約価格には差があり、その大きさはエリアでかなり違う。ただし数字が教えてくれるのは「今どのあたりにいるか」という現在地までで、最後の判断は、お家ごとの条件とご家族の暮らしに合わせて行うものです。このレポートは毎月更新していきます。数字の変化を一緒に眺めながら、ご自身のお家の「ちょうどいいタイミング」を考える材料にしていただけたらうれしいです。私たちも、毎月の観測を丁寧に続けてまいります。なお、表に載せていない市区も含めて全24市区分を集計しています。ご自身のエリアの数字を知りたい方や、「古家付きで売る」「更地にして売る」の手残り比較を試算したい方は、無料相談で個別にご案内しています。

最終更新日: 2026-07-17
本記事は2026年度の制度と、2026年7月時点の当社独自調査・公的データに基づく解説です。市場の状況は日々変わります。制度の最新情報は各公式サイトで、実際の売買のご判断は個別の物件調査・査定に基づいてご確認ください。


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